福島県知事選から読み解く内堀県政の展望
医療ジャーナリスト
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1967年福島県生まれ。1990年千葉大学文学部行動科学科卒業。同年福島民友新聞社入社。マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。
東京電力の福島第一原子力発電所の事故による農畜産物や水産物の放射能汚染が広がる中で新学期を迎えた福島県内では、自治体による学校給食の食材の放射能量を独自に計測する試みが始まっている。
白河市ではすでに学校給食センターで調理する野菜等の計測が始まり、喜多方市は業者に委託して計測を実施している。また、福島市、いわき市、須賀川市、二本松市、南相馬市、田村市、本宮市は、実施に向けて機器購入費の補正予算を計上したり、職員の研修などの準備に入った。10月までに福島県の13市のうち9市で独自計測が実施される見通しで、現時点では実施を決めていない市もこうした動きに注目している。
県内の農畜産物については、国と県で検査が実施されているが、抽出検査のため検査されるサンプル数が限られる。そのため保護者らからは「学校給食は本当に大丈夫なのか」との不安の声が寄せられていた。福島県内の複数の自治体では、現在の国や県の検査体制では、住民が安全・安心を実感できないと判断し、首長自らの判断で実施に踏み切った形だ。
しかし、実際に計測を始めると、「国が定めた放射性セシウムの暫定規制値500ベクレル以下であれば本当に安全と言えるのか」といった意見や、測定機器の検出限界値(ND値)をどこに設定するかなど、議論しなければならないことが多くあることがわかった。ND値については、これを低く設定すれば僅かな放射線でも判定できるという利点がある一方で、測定に時間がかかるというディメリットがある。
ほかにも、「結果を公表すると風評被害にならないか」「数値が出たものを拒否した場合、野菜等の仕入れ業者との契約で損害賠償訴訟が起きないか」「計測機器購入費や職員人件費をどうするか」「県外産で数値の高い食材が出た場合の対応は」など、実施にあたっての課題も浮上し、議論が重ねられている。
福島県内で進む学校給食食材を独自に測定する試みの現状と課題を、白河市立小田川(こたがわ)小学校の現地取材とともに、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。