電力供給の8割を再エネで賄うことは可能だ
自然エネルギー財団シニアマネージャー
1976年神奈川県生まれ。99年立教大学文学部卒業。2001年東京水産大学(現・東京海洋大学)水産学研究科修士過程修了。05年東京工業大学生命理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。慶應義塾大学自然科学教育研究センター特任助教、東京経済大学全学共通教育センター准教授などを経て2022年より現職。著書に『サンゴは語る』。
環境問題をテーマにお送りするセーブアース。第5回は海の生物多様性の象徴的な存在であるサンゴと環境破壊の問題をとりあげる。
国際自然保護連合(IUCN)によると、世界中でサンゴ礁を形成しているサンゴの36%が絶滅の危機に瀕しているという。大きな原因は海水温の上昇によるサンゴの白化と人間による開発や汚染だ。
サンゴの白化はサンゴに糖を提供する褐虫藻が減少することで生じるが、海水温の上昇によってサンゴと褐虫藻の共生が難しくなっている。長年サンゴの研究に携わってきた東京経済大学の大久保奈弥教授は、水温上昇に加えてサンゴがマイクロプラスチックを蓄積することが、褐虫藻の活動を制限している可能性があると指摘する。(マイクロプラスチックが環境や人体に与える影響については第3回のセーブアースでも取り上げている。)
またリゾート開発や埋め立てによる人為的なサンゴの破壊も深刻だ。開発の際に環境保全のために行われるサンゴの移植にも問題が多く、逆にそれが開発の免罪符になっている。
2019年には安倍元首相が辺野古基地の北側にある大浦湾のサンゴを移植しているという説明をおこない批判を浴びたが、大久保氏によれば移植すれば埋め立てをしても良いという理屈は大きな問題を孕んでいる。 沖縄県が公表しているデータによれば2011年以降に移植されたサンゴのうち、16年まで生存していたサンゴは1割に過ぎなかった。サンゴの移植は代替措置として不十分であり、本当にサンゴを保全したいのであれば、サンゴを破壊する開発そのものをやめる必要がある。
サンゴ破壊の原因や保全のために必要な対策について、大久保氏と環境ジャーナリストの井田徹治が議論した。