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2024年08月17日公開

当たり前な学習環境を実現するためには学校の断熱改修が急務だ

セーブアース セーブアース (第23回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2024年11月17日23時59分
(終了しました)

ゲスト

東京大学大学院工学系研究科准教授
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1975年広島県生まれ。98年東京大学工学部卒業。2003年同大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。博士(工学)。独立行政法人建築研究所研究員、東京大学大学院東京電力寄付講座客員助教授などを経て08年より現職。著書に『エコハウスのウソ』など。

著書

概要

 第23回のセーブアースは、前回に引き続き前真之氏をゲストに迎え、建物の断熱、とりわけ学校の断熱改修を取り上げる。

 最高気温の上昇や猛暑日の増加など国連グテーレス事務総長が言うところの「地球沸騰化」の進行を今、われわれは日々目の当たりにしている。そのような状況の下、特に子どもたちの学習環境が劣悪なまま放置されていることが問題だと東京大学大学院工学系研究科准教授で建物の断熱や気密に詳しい前真之氏は言う。

 日本の公立学校の校舎は50年以上前に建てられたものも多く、またその多くはコンクリートで建てられている。しかし、天井が無断熱のため、特に最上階は屋根の太陽熱がそのまま室内に侵入するため、夏は高温になる。また、建築基準法で窓の面積が床面積の1/5以上なくてはならないことが定められているため、学校には例外なく非常に大きな窓が設置されているが、これでは太陽光がそのまま室内に侵入してくる。その一方で、窓を開けるとエアコンが効かなくなるため、窓が開けられず換気不良になってしまう。今の学校教室の夏場の環境は、とても人間が生きられる環境とは言えないと前氏はこれを厳しく断罪する。

 このような学校の劣悪な環境は、エアコンをつければ解決するというようなものではない。建物の断熱がしっかりしていないと、冷房をつけても室内温度を下げることができないからだ。建物の断熱改修は冷暖房の効率を上げるためにも必要なものだ。

 現在の学校の劣悪な環境を改善するためには、断熱改修と換気設備の設置が急務であると前氏は言う。まず、天井と壁の断熱や内窓の設置、窓の日射遮蔽などを行うことによって、夏だけでなく冬も快適な学習環境を整備することができるようになる。また、学校はオフィスや住宅と比べて大勢の生徒が一定の空間に密集するという特徴があるため、大量の換気をする必要がある。冷暖房の効率と必要な換気量の確保を両立するためには、デマンド換気熱交換換気の導入が求められる。

 このような断熱改修を行うにはコストがかかると考える向きは多いだろうが、実は総合的なコストという観点から見ても断熱改修は有効だ。断熱改修を行い換気設備を導入すれば、エアコンの稼働時間を大きく削減することができる。これで冷暖房のための電気代を抑えることができるほか、稼働時間が減ればエアコンの設置・改修コストも削減できる。建物を断熱材で覆う改修を行えば、建物自体の寿命も延ばすこともできる。コストはこうしたことを考慮に入れてトータルで考えるべきものだ。

 日本は元来、特に子どもに対しては鍛えるとか我慢させることに価値を置いた発想が根強いが、それが学校教室の断熱化の妨げになっていると前氏は言う。人間誰しも多少の我慢は必要かもしれないが、昨今の猛暑酷暑はもはやそのような発想で乗り切れるレベルのものではなく、無理をすれば容易に健康を害してしまう。気候変動について責任を負っていない一方で、義務的に学校に行かなければならない立場に置かれている子どもたちを、大人のわれわれが劣悪な環境の中に閉じ込めておくことの倫理的な問題も考慮する必要がある。無理なく快適に暮らせる環境を低エネルギーで実現するという方向に発想を転換する必要があると前氏は言う。

 2回にわたり連続で高断熱、高気密住宅をテーマにお送りしているセーブアースでは、今回は学校の教室を快適でエネルギー効率の良いものにしていくためには何が必要かなどについて、前真之氏と環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。

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