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2024年05月21日公開

世界のウナギを食べ尽くす・消費大国日本が問われる責任

セーブアース セーブアース (第20回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2024年08月21日23時59分
(あと46日19時間35分)

ゲスト

1984年宮城県生まれ。2006年東北大学法学部卒業。12年英・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン修士課程修了。WWFプログラムオフィサー(野生生物取引・水産担当)、NGO「トラフィック」ヨーロッパオフィス・プログラムオフィサー(野生生物取引調査)などを経て22年より現職。

概要

 地球環境問題について考えるセーブアース。第20回の今回はウナギの国際取引の現状と日本の責任について取り上げた。

 ウナギの危機が叫ばれるようになって久しい。しかし、日本では未だに何事もなかったかのように多くの人にウナギが食されている。ウナギは現在どのような状況にあるのか。

 完全養殖の技術が確立されていないウナギは、今も天然の稚魚を捕獲して養殖したのちに出荷されている。日本で消費されるウナギの3分の2は中国や台湾から輸入されたものだが、中国や台湾でウナギの養殖が始まった2000年以降、日本でも比較的安価なウナギが手軽に食べられるようになったことで、日本のウナギの輸入量は急増している。

 しかし、資源としてのウナギが危機的な状況に置かれていることは今も変わりがない。ウナギ属のなかでも特にヨーロッパウナギは危機的な状況にあり、2007年にワシントン条約の附属書に掲載され、EUは2010年に輸出入を禁止した。IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでCR(近接絶滅種)に指定されるなど、資源量は1970年代に比べ90%ほど減少しているという。

 ヨーロッパウナギの輸出規制を受けて、日本ではアメリカウナギの輸入量が増えている。しかし、アメリカウナギもレッドリストでEN(絶滅危惧種)に指定されるなど、危機的な状況にあることに変わりはない。カナダ政府は近年密猟が増えたことから、2024年にウナギの稚魚であるシラスウナギ漁を一切禁止する厳しい措置に踏み切った。現在、シラスウナギ漁が許可されているアメリカのメイン州とサウスカロライナ州では比較的しっかりと資源管理されているが、最近はアメリカウナギの輸出元がアメリカからハイチなどのカリブ海諸国にシフトしてきている。こうした国々では資源量がほとんど把握できていないし、密猟や違法取引などの存在も指摘されているため、このまま放置されればウナギ資源はますます危機的な状況に陥る恐れがある。

 現在日本に入ってきているアメリカウナギの多くが、こうした国々から稚魚として香港を経由して中国や韓国に輸出され、そこで養殖されたものだ。

 東アジアでは2014年-2015年シーズンから中国、台湾、韓国、日本の4カ国が非公式に協議し、シラスウナギの池入れ量の上限を設定している。ニホンウナギについては前年の80%、その他のウナギは前年を超えない量を上限とすることを取り決めたが、これはあくまで自主規制に過ぎず、努力義務でしかない。中央大学研究員でウナギの生態に詳しい白石広美氏は、ウナギの資源を護るためには、現在非公式で行われている協議を法的拘束力を持つ正規の枠組みに格上げするほか、ウナギを取り扱う業者がどこで獲れたウナギなのかや、合法的に取引されたものなのかといったトレーサビリティをしっかり行うことが重要だと語る。

 日本に根付いたウナギという食文化を次世代に継承していくために、いかにしてウナギを護っていくのか、ウナギの消費大国日本の責任とは何かなどについて、白石氏と環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。

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