電力供給の8割を再エネで賄うことは可能だ
自然エネルギー財団シニアマネージャー
1973年神奈川県生まれ。96年明治学院大学社会学部卒業。NPO法人「ストップ・フロン全国連絡会」、衆院議員秘書、全国地球温暖化防止活動推進センターを経て、2008年よりNPO法人「気候ネットワーク」職員。13年より現職。
地球環境問題をテーマにしたセーブアース。第10回の今回は冷蔵庫やエアコンなどで市民生活に広く浸透している代替フロンと地球温暖化の関係を取り上げる。
冷媒として冷凍庫やエアコンなどに広く使われていたフロンガスは、オゾン層を破壊する物質として1986年のモントリオール議定書で全廃が決議され、90年代以降、削減が進んだ。しかし、使用が禁止されたフロンの代わりに使われるようになった代替フロンは、オゾン層の破壊効果は少ないが、地球温暖化に与える影響が実は非常に大きい。CO2と比較すると代替フロンの一種のHFC(ハイドロフルオロカーボン)は温暖化係数(GWP)が1,430倍、半導体の製造などで使われるPFC(パーフルオロカーボン)は7,390倍にものぼる。
地球温暖化問題などに取り組むNPO法人気候ネットワーク東京事務局長の桃井貴子氏は、すでに90年代半ばから代替フロンが地球温暖化を加速させる効果を持つことは知られており、欧州ではアンモニアやCO2などの自然冷媒が使用されてきたが、日本ではもっぱら代替フロンへの切り替えが進められてきたという。
環境省が公表している温室効果ガスの排出量の推移をみると、2013年以降、CO2の削減が進む一方で、代替フロンの排出量は確実に増大している。しかし政府は2019年には二酸化炭素換算で4,000万トンを超えている代替フロンを、2030年までには二酸化炭素換算で約2,000万トンまで削減することを目標に掲げており、実現性に疑問が残る。また一度製品に使用されたフロンの回収率についても、2002年の調査開始時から微増はしているが、21年段階で未だ5割に届いていない。このままでは政府が掲げる2030年までに75%という回収率目標を達成するのは難しい。生産から破壊までの全過程で一体的にフロンを減らすことを目指して2013年に制定されたフロン排出抑制法が当初の目的を遂げているとは言い難い。
ではどのような対策をとれば良いのか。桃井氏は、現在の政府のフロン削減策は温暖化係数がより低いフロンへの移行を促すものだが、そもそも代替フロン使用から自然冷媒への転換を進めることの方が重要だと主張する。また、既に使用されているフロンの回収率を上げる手段を講じる必要があると桃井氏は述べる。 日本の環境問題対策に共通する課題だが、小手先の対策ではなく構造的な転換を図る必要があると語る桃井氏と、環境ジャーナリストの井田徹治が議論した。