時代錯誤の再審制度のままでは冤罪被害者を救えないではないか
弁護士、日弁連再審法改正実現本部本部長代行
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今年3月に再審が決定した袴田事件で、検察が有罪立証を行う方針を明らかにしたことを受け、袴田巌さんの姉の袴田秀子さんと弁護団の事務局長を務める小川秀世弁護士が7月25日、日本外国特派員協会で会見し、再審公判に臨むうえでの抱負などを述べた。
袴田巌さんは1966年に静岡県清水市で起きた強盗殺人事件の犯人と見做され、1980年に死刑判決を受けた後、死刑囚として刑務所に収監された。しかし、その後2014年、2度目の再審請求で静岡地裁が再審開始を決定したことで釈放された。逮捕時からの収監期間は48年間にのぼった。
その後検察が抗告し東京高裁が地裁判決を取り消したため、袴田さんは再審決定を勝ち取るために最高裁まで争うことを余儀なくされたが、2023年3月13日に東京高裁が再審開始を決定し、ようやく再審公判が行われることが確定した。ところが、7月10日に検察が有罪立証を行う方針を示したことで、再審公判も長期化する可能性が出てきている。
2014年に保釈された後、袴田さんは死刑囚として長期にわたる収監による拘禁反応とみられる精神症状を示すなど、87歳という年齢とともに健康状態にも不安を抱えている状態だ。
袴田巌さんの姉秀子さんは巌さんの死刑確定から43年間、あきらめることなく弟の無罪を勝ち取るために戦ってきた。そこまでがんばれた理由について聞かれた姉の秀子さんは、「巌は無実だと思っています。無実だからがんばれました」と答えた。また、検察が依然として有罪立証を行う方針を示していることについては、「検察の都合でそうなっているのだと思いますが、立証するというのならどうぞ」と語り、巌さんの無罪獲得に自信をのぞかせた。
小川弁護士は、巌さんの有罪の決め手となった「5点の着衣」は既に証拠としては却下され、裁判所から捜査官による捏造の可能性まで指摘されていることに言及した上で、証拠に基づかない有罪の主張は法律的に許されないことを強調した。また、なぜ検察は勝ち目がない裁判で有罪立証まで行おうとしていると思うかを聞かれた小川氏は、再審決定の際に裁判所から指摘された証拠捏造の疑いだけは晴らしたいと考えていることに加え、公判を長引かせて時間稼ぎをすることで高齢の袴田氏が倒れるのを待っている可能性もあるのではないかと語った。