ジャニーズを「サンクチュアリ」(聖域)化し、ジャニー喜多川を「怪物」にしたものとは
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メディア社会学が専門の伊藤高史・同志社大学教授が6月30日、日本記者クラブで会見し、週刊文春が一連のジャニー喜多川氏(本名・喜多川擴=2019年7月9日死去)からの性被害を報道をした後に、他のメディアが後追い報道をしなかったのは、ジャニーズ事務所から訴えられるリスクが高いと判断していたからとの見方を示した。
1999年に文春がジャニーズ事務所から名誉毀損で訴えられた裁判ではセクハラ行為を報じた文春の記事の真実性が認められ、文春が一部勝訴した点が俄然注目を集めたが、裁判自体はその他の点では名誉毀損が認定され、最終的に文春に120万円の損害賠償の支払いが命じられている。当時、他社が後追いでこの問題を報じた場合、ジャニーズ事務所側から訴えられるリスクは現実的なものだったと伊藤氏は言う。
日本の報道機関が名誉毀損で訴えられた場合、裁判に勝つためにはアメリカのように報道する側が「悪意の不在」を証明するだけでは不十分で、報道内容の公共性や公益性の他、報道された内容が真実であること(真実性)、もしくは真実であると信ずるに足る理由があること(真実相当性)が求められるなど、より高い条件をクリアする必要があることもその一因だと伊藤氏は指摘する。
伊藤氏はまた、報道機関としては警察が捜査に乗り出せば事件として報道できるが、当時の準強制性交罪には「身体的または心理的に抵抗することが著しく困難な状態」を意味する「抗拒不能」な状態が成立要件として求められているため、立件は困難だったとの見方を示す。
ではなぜ今になってジャニーズ問題は報道されるようになったのか。伊藤氏は最初に報じたBBCが海外の権威ある報道機関だったため訴訟リスクが低かったことや、日本のマスコミが報じなくてもBBCのyoutube動画が日本国内でも拡散されたこと、そして記者会見の場で被害者が顔を出して被害の実態を訴えたことがマスコミにとって報道しやすい環境を作り出したと語った。