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岡山大学教授で疫学が専門の津田敏秀氏は10月8日、外国特派員協会で記者会見し、2011年3月の福島第一原発事故以降、福島県に子供たちの間で甲状腺がんの異常な増加がすでに始まっていることを示す論文を、国際環境疫学会の学会誌「エピデミオロジー(疫学)」に投稿し、受理されたことを発表した。
津田氏によると、福島県が原発事故当時18歳以下だった県民を対象に行っている超音波エコーを用いた甲状腺スクリーニング検査の結果を日本の全体の甲状腺がんの発生率と比較した時、最も発生率の高かった地域で50倍、もっとも低い地域でも20倍の多発が起きていることが明らかになったという。
1986年のチェルノブイリ原発事故でも子どもの間で事故後1~4年の間で甲状腺がんの異常な発生は始まっていたが、それは5年後の激増と比べると「小さな多発」だったと津田氏はいう。その上で津田氏は、国や県が現在の小さな多発を認めないことで、しかるべき対策が取られていないことを批判した。
チェルノブイリ原発事故では事故後5年目以降に甲状腺がんが激増したことが広く知られている。そのため、国や県は福島の事故後1年~3年の間の健康調査で表面化した甲状腺がんについては、時期が早すぎるとの理由から、原発事故で流出した放射線の影響によるものとは考えにくいとして、静観する構えを見せている。また、一部の専門家も、福島で甲状腺がんの発症が増えている理由として、検査をしたために必要以上に多くの症状が表面化してしまう「スクリーニング効果」などを指摘している。
しかし、津田氏は現在福島で起きていることは、スクリーニング効果だけでは説明がつかないレベルにあると指摘した上で、チェルノブイリのように事故後5年目以降に甲状腺がんが急増する前に、必要な対策を実施する必要性を訴えた。