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2023年05月11日公開

フリーランス新法をフェアで多様な働き方を実現する始めの一歩に

ポリティコ ポリティコ (第9回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年08月11日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1978年広島県生まれ。99年共立女子短期大学卒業。タレントや放送作家などを経て、2013年東京都議会初当選(世田谷区)。19年参院初当選(東京都選挙区)。参院1期。著書に『女性政治家のリアル』。

著書

概要

 原発の60年を超える運転を可能にするGX束ね法案や、難民申請者の強制送還を容易にする改正入管法など多くの重要な法案の審議が進む中、4月28日には参院で、いわゆるフリーランス新法が全会一致で可決、成立した。

 この法律は特定の組織に属さない、いわゆるフリーランスの就業者が、企業などから仕事を受注する際、発注や支払いで不当に不利な扱いを受けないための最低限のルールを制度化するもの。どうしたことか社内で多くのフリーランスに業務を委託しているはずの大手メディアが、このニュースをあまり詳しく取り上げないこともあり、他の法案と比べて注目度が高いとは言えないが、日本人の働き方の選択肢を広げる可能性のある重要な法律だ。

 そもそもフリーランスの実態はこれまでほとんど知られてこなかった。しかし、2020年の内閣府の調査によると、現在日本でフリーランスとして働く人は462万人おり、コロナでリモートワークが一般化されたことで、その数は増加傾向にあるという。

 しかし、フリーランスの収入や待遇は一般の企業労働者に比べると決して良いとは言えない。リクルートワークス研究所の2020年調査では就業者全体の年収平均が342.2万円なのに対して、本業のフリーランスの年収は256.1万円にとどまる。フリーランスは法律上は「労働者」ではなく「受託事業者」となるため、労働基準法の適用を受けず、労災や企業年金、企業健康保険の対象にもなっていない。

 さらに内閣府の調査ではフリーランスの4割近くが、支払いや締め切りなどで発注者から不当な扱いを受けた経験を持つと答えたという。自身もフリーランスの放送作家などとして働いた経験を持つことから、この法案審議に積極的に関与してきた立憲民主党の塩村あやか参院議員は、今回の新法は不十分な点も多いが、フリーランス取り引きを適正化する第一歩にはなると評価する。この法律の制定により、これまで口頭での口約束が多かった委託事業者からの発注も、仕事内容や報酬額を事前に書面やメールで明示することが義務づけられた。また、完成品の一方的な受領拒否や報酬減額なども禁止されるなど、これまで歪な力関係の下で泣き寝入りを強いられることが多かったフリーランス取引の適正化に向けた最低限のルールが定めれている。さらに、まだ努力目標の域を出ないが、委託事業者側にフリーランスの育児や介護との両立に配慮する義務や、ハラスメントを受けた際に相談できる窓口の設置なども求められている。これが順守できない事業者には、50万円以下の罰金も設けられた。

 塩村氏は、国会にはフリーランスを経験した人が少ないこともあり、必ずしもフリーランスの窮状を理解できていないため、今回の法案審議でも与野党を問わずフリーランス保護に消極的な議員が多かったと述べる。しかし、従来の昭和的な「サラリーマンこそが正統な生き方」という感覚は世代を追うごとに薄れ、自分に合った多様な働き方を模索する人が、とりわけ若い世代には増えてきている。にもかかわらず、特に国会や霞ヶ関ではとりわけ上の世代の間でフリーランスに対する偏見もあり、まだ必ずしも理解が進んでいない。

 今回の新法でフリーランスの立場は本当に強化されるのか。これが日本の労働者が多様な生き方を模索するための一里塚となるのか。フリーランス出身の塩村議員と、ともにフリーランスの経験が長い政治ジャーナリストの角谷浩一、神保哲生が議論した。

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