自民党に歴史的大敗をもたらした民意を読み解く
慶應義塾大学名誉教授
第7回目となる今回の「永田町ポリティコ」では、4月9日に行われた統一地方選の前半戦の結果分析と、23日に予定されている地方選の後半戦ならびに衆参の補欠選挙の展望を角谷浩一と神保哲生が議論した。
4月9日の前半戦では、41の道府県議会議員選挙と9つの知事選挙、6つの政令指定都市の市長選挙が争われた。
この選挙では維新の躍進が際だった。道府県議会の議席を60以上伸ばしたほか、吉村洋文知事が圧勝で再選された大阪府知事に加え奈良県知事のポストも手中に収めた。自民党との相乗りで勝利した兵庫県知事を含めると、維新は関西地方の3つの府県の知事のポストを確保したことになる。
また、今回の知事選では自民党の分裂選挙となった県で選挙結果に大きく影響が出た。5選を目指した現職の荒井正吾氏と県連会長の高市氏が推す平木省氏による保守分裂選挙となった奈良県知事選挙では、漁夫の利を得た形となった維新の山下真氏が当選したほか、同じく保守分裂選挙となった徳島県知事選挙では衆院議員の後藤田正純氏が現職で全国知事会の会長でもある飯泉嘉門氏を破って当選している。
少なくとも統一地方選の前半戦を見る限り、全体として自民党が86議席を減らした一方で、65もの議席を維新が新たに獲得した選挙となった。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、維新が有権者の支持を集めた要因として、維新の「カメレオン的」な主張の成果だったと評価する一方で、立憲などの野党に対する期待が低いことから、自民党以外に投票したいと考える有権者の多くが維新に投票していると指摘する。
神奈川県知事選挙では、投票日直前に文春砲によって不倫スキャンダルが発覚した黒岩氏が圧勝したが、恐らく抗議の意思表明と見られる白票が20万票も出た点が注目される。元々無風とみられていた選挙だったが、スキャンダルの発覚が投票日直前だったため、黒岩氏を脅かす候補者が見当たらず、一部の有権者がやむなく抗議の意味を込めて白票を投じたと見られる。謝罪を繰り返す黒岩氏は当選はしたものの、今後手負いの知事がどれほどの指導力を発揮できるだろうか。
1970年代から一貫して下がり続けてきた地方選挙の投票率は、今回知事選で46.78%、道府県議会選挙で41.85%と過去最低をさらに割り込んでいるが、その一方で、現職有利の状況も更に強まっており、知事や地方議員の現職の再選率が軒並み9割を超えている。これでは投票に行くだけ無駄と考える有権者が多く出るのもやむを得ないかもしれない。無投票当選の候補数が全体の2割を越えることと併せ、日本の民主主義の根幹を支えるはずの地方政治の活性化は待ったなしだ。