自民党に歴史的大敗をもたらした民意を読み解く
慶應義塾大学名誉教授
2024年は1日に能登半島大地震、2日は羽田空港で航空機の衝突炎上事故と、相次ぐ悲しいできごとで幕を開けた。
しかし、そのような危機にこそ迅速な対応が求められる政治は、年明け早々から現職の国会議員が逮捕されるなどパーティ裏金スキャンダルに揺れ、岸田政権の当事者能力が問われる事態となっている。
地震大国の日本では大地震は避けられないし、航空機事故も管制の指示の誤認などヒューマンエラーはいつ起きても不思議はない。しかし、問題は大地震が起きた時、救援体勢の構築やライフラインの復旧などを迅速に進めることで事後の被害を最小化し震災関連死をどれだけ防げるかにあり、それは政治と行政の手腕にかかっている。また、航空機事故にしても、機長が管制の指示を取り違えたり誤認した時、それが直ちに大事故につながらないようにするために、どれだけのセーフティネットが用意されているかが問われる。
しかしながら年初に起きた震災と事故は、震災への備えや対応という意味でも、大事故を未然に防ぐためのセーフィティネットの整備という意味でも、今の日本がとても先進国とは言えないほど、不十分な対応しかできなくなっている実態を露呈することとなった。
その危機的な状況に対して肝心の政治は、問題となっている現在の政治文化のど真ん中に居座る長老議員たちを幹部とする「政治刷新本部」なる、明らかに有権者をバカにしているとしか思えないようなアリバイ組織を作り、そこで今後の改革を議論するなどと言い出している。泥棒に泥棒を捕まえることなどできるはずがない。
今回の一連のできごとは、単にパーティ収入が未記載だったことやキックバックが裏金化していたことにとどまらず、政治そのものがもはや完全に機能不全に陥っていることを強く印象づける結果となった。
日本の政治はなぜこのような悲惨な状態に陥ってしまったのか。どこに真の原因があり、どうすれば本当の意味で今の政治を「刷新」することができるのか。
政治ジャーナリストの角谷浩一とジャーナリストの神保哲生が議論した。