人を幸せにする経済とは
東京都立大学教授・社会学者
1985年東京都生まれ。2008年慶応義塾大学経済学部卒業。同年ゴールドマン・サックス証券入社。10年、認定NPO法人Doooooooo(現認定NPO法人CLOUDY)を設立し代表理事に就任。15年にゴールドマン・サックス証券を退社。同年、株式会社DOYAを設立し代表取締役に就任。
1959年宮城県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。(博士論文は『権力の予期理論』。)著書に『日本の難点』、『14歳からの社会学』、『正義から享楽へ-映画は近代の幻を暴く-』、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』、共著に『民主主義が一度もなかった国・日本』など。
第4回の経世済民オイコノミアは、NPO法人や株式会社の運営を通じてアフリカ支援を行っている銅冶勇人氏とともに、先進国からの押し付けではなく相手国の自立を促す支援のあり方や、逆に現地の人びととの交流の中で日本人が学ぶべきことなどについて、社会学者の宮台真司氏もゲストに迎えて議論した。
銅冶氏は、日本のアフリカへの教育支援が総じて、学校を設置するだけで満足してしまい、継続的な支援ができていないと考え、現地自治体と負担を共有しながら公立学校の設立を進めている。しかし、いざ開校すると、自分自身が教育を受けていないために、学校というものに対して拒否反応を示す親も多い。そのため親にとっても子どもを学校に通わせることのメリットが生じるように、給食を提供する仕組みを作ることなどが重要になっていると述べる。子どもたちの中には給食を半分家に持って帰る子もいる。給食が子どもだけでなく家族にとってもかけがえのない食料源となっているのだ。
また、銅冶氏は雇用を生み出すために、現地に自社ブランドCLOUDYの工場を建設している。自身が設立した学校の卒業生のなかに売春婦になった女性がいたことを知り、女性の就労の選択肢を増やすことの必要性を痛感したからだ。
そもそもアフリカへの支援というと直接的にお金や物品を送付するケースが多く、中古の衣服を回収し発展途上国に送る大手衣料品メーカーも多い。だが銅冶氏は過剰な物品の援助は現地の雇用を奪うことにつながり、かえって自立的な産業の育成を妨げるため、「アフリカに服を送ってはいけない」と述べる。銅冶氏は自社ブランドの衣料品のうち約60%を現地の工場で生産することで雇用を生み出すほか、現地の素材やデザインなどを服作りに生かしているという。
かつてゴールドマン・サックス証券で営業として働いていた銅冶氏は、ゴールドマン・サックス時代の激務の中で、時に気力を失うことがあり、年に一度の長期休暇の際にアフリカで支援活動を続けることが、再度エネルギーを充填する機会になっていたという。そんな銅冶氏にとってアフリカは、一方向的に支援する対象ではなく、自分自身にとっても学びや喜びを与えてくれる存在になっているという。
銅冶氏がアフリカで撮影した映像を紹介しつつ、途上国支援のあり方や日本がアフリカから学ぶべきことなどについて、銅冶氏と社会学者の宮台真司、田内学が議論した。