アフリカでのビジネスを通してわれわれが学べること
株式会社DOYA代表取締役社長・NPO法人CLOUDY代表理事
東京都立大学教授/社会学者
1946年長野県生まれ。71年東京大学文学部卒業。71年から2010年まで灘中学・高等学校日本史教諭、教頭。11年から立命館大学総長招聘教授、教育センター長。15年より現職。
第13回の経世済民オイコノミアでは、灘中学・高等学校で約40年にわたり教鞭をとり、現在は立命館大学稲盛経営哲学研究センターで副センター長を務める倉石寛氏をゲストに迎え、学校教育で社会の課題を解決する人を育てるために何が必要なのかを議論した。
2022年から「公共」が高校の新たな必修科目として導入され、文科省はこれまでの知識偏重型の教育から脱却するために、生徒自身が問いをたてて対話によって学びを深めていくアクティブラーニングへの転換を進めている。しかしこの新科目の教科書を執筆した倉石氏によると、問いを中心にした教科書を作ろうとしても、大学進学が至上命題とされている教育現場からは答えが明確で試験に出しやすい内容を求める声が大きいのが現実だという。
倉石氏は、1990年初頭のバブル崩壊以降の低成長の時代が続く中、親世代に将来不安から子どもに少しでも良い教育を受けさせようとする姿勢が顕著になったことで、大学進学率も上昇したと語る。結果的に子どもの数は減っているにもかかわらず、1980年には26.1%だった大学進学率は2022年には56.6%にまで上昇した。こうした需要に応えるために設置される大学の数も1980年の446校から2022年には807校にまで増えた。その結果、高校教育は大学受験に役立つ内容ばかりが重視されるようになり、従来の小規模な個人経営の塾に代わり大手の学習塾の台頭が進んだと倉石氏はいう。
公共の教科化が目指した、生徒自身が社会の課題を見つけて解決していくような教育を実現するためには、生徒が共同作業で何かを実現していくような経験が重要になる。公教育の現場で教員の負担の増加により生徒にそうした経験をさせることが難しくなっている今日、NPOにその役割が期待されていると倉石氏は言う。
倉石氏と、自身も「公共」の教科書の執筆者を務めた金融教育家の田内学が議論した。