人口減少する社会で若者を支えるためには相続税を強化すべき
衆院議員
1979年東京都生まれ。2003年東京大学経済学部卒業。08年ハーバード大学経済学科博士課程修了(Ph.D.)。博士(経済学)。同年イェール大学コウルズ財団博士研究員、09年スタンフォード大学経済学部助教授、11年コロンビア大学経済学科客員助教授、13年スタンフォード大学経済学部准教授、19年同大学教授、20年より現職。共著に『天才たちの未来予測図』、『社会の仕組みを経済学で創る』(kindle版)など。
第12回のオイコノミアでは東京大学マーケットデザインセンターのセンター長を務める小島武仁氏をゲストに、マッチング理論やマーケットデザインについて話を聞いた。
小島氏の研究対象は人や物、サービスを適材適所で引き合わせることを目指すマッチング理論とその社会実装だ。小島氏によれば金銭を通じたやりとりであればお金が一種の潤滑油のようになり、金額に見合った物やサービスを受け取ることができるが、貨幣を用いることが必ずしも適切ではない分野では個々人の希望に即したマッチングを叶えることができない場合がでてくる。それを数理的にアルゴリズムを用いてマッチングできるようにするのがマッチング理論であり、実際に研修医の配属先や保育所選択、入試、就活や企業内人事などに適用できる可能性があるという。
例えば保育所の選択で、子どもを保育所に入れたい保護者はまず自治体に希望票を提出し、自治体は希望票の情報をもとに保育所を決定するが、当然希望が集中する保育所があれば、希望する保育所に入所できない人が出てくる。マッチング理論ではここでゲール=シャプレー方式とボストン方式という2つの方式によって、この問題の解を見つけようとする。
ゲール=シャプレー方式は、希望票に記載する就業状況や健康状態、祖父母の状況、兄弟の在園状況などの項目の点数順に希望保育所に振り分けていく方法だ。一方でボストン方式では、先に希望ごとに保育所に振り分けて、定員以上になる保育所については前述の点数順に決定する。まず希望が反映されるという意味で後者の方式が優れているようにも思えるが、後者にすると最初から希望が集中する保育所を避けて、入れそうな保育所を希望するという戦略が働くため、当初の希望が反映されなかったり保護者の側に戦略を考えなければいけない心理的負担が生じる。その意味で小島氏は前者の方式の方が優れていると語る。
このようなマッチング理論を用いることによって、現在は職員が手作業で行っている保育所の振り分けを電子化することが可能になると小島氏は言う。実際に小島氏が山形市のデータを基にシミュレーションしたところ、大幅な待機児童の解消が見込めたという。また小島氏は保育園は基本的に居住する基礎自治体ごとに決められているが、隣の自治体の保育園を利用する「越境入園」もアルゴリズムを使って自治体の流入数と流出数を調整することで実現できる可能性があるという。
マーケットデザインは経済学分野で注目を集めており、2012年にはUCLAのロイド・シャプレー教授やスタンフォード大学アルビン・ロス教授がノーベル経済学賞を受賞している。スタンフォード大学ではロス教授との共同研究も行っていた小島氏も、将来のノーベル賞受賞を嘱望される一人である。小島氏は2020年から日本に戻り、東京大学のマーケットデザインセンター長を勤めるが、日本の研究環境は研究費や給料などが圧倒的に米国よりも低いのに加え、明らかに研究職とは関係がない試験監督などの仕事に追われるなど問題が多いと指摘する。
小島氏と金融教育家の田内学が議論した。