国葬と旧統一教会問題に揺れる永田町に今起きていること
政治ジャーナリスト
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1961年神奈川県生まれ。85年日本大学法学部新聞学科卒業。東京タイムズ記者、「週刊ポスト」、「SAPIO」編集部、テレビ朝日報道局などを経て1995年より現職。
岸田政権が発足した。
先の自民党総裁選とその直後に行われた党内人事では、派閥の力関係への配慮から安倍・麻生両元首相に対する恭順の意を表明していた岸田氏だったが、いざ首相の座につくと、党役員・組閣人事でこれまでとは少々違う顔を覗かせ始めている。
相変わらず党内最大派閥の細田派には最大限の配慮を払いつつ、幹事長、官房長官、事務の官房副長官といった政権の要となるポストについては安倍氏の要求をはねつけてでも独自色を打ち出すなど、岸田氏の姿勢には総裁選の前とはやや変化が見られる。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、党内最大派閥をもってしても、総理・総裁の力を完全にコントロールすることはできないと指摘する。選ばれるまでは猫を被っていても、いざ選ばれたら、いつまでも猫撫で声で擦り寄っているわけではないというのだ。
今回の組閣人事で、岸田首相は自らが率いる宏池会の他には、特に麻生派と竹下派の議員を重用した。派閥として抱える議員数から言えば、96人の議員を抱える細田派は他派閥(麻生派53、竹下派51、岸田派46)のほぼ倍の規模を誇るが、実際の入閣者数は細田派の4に対して、竹下派が4、岸田派と麻生派がそれぞれ3だった。
角谷氏は、麻生派には宏池会から分離してきた議員が多く含まれていることを指摘した上で、元々自民党は保守本流を標榜する宏池会(現岸田派)を中心とする中道穏健派が主流を占め、外交的にはタカ派路線の清和会(現細田派)とは政策的に一線を画する立場にあったと語る。しかし、2000年の森喜朗首相以来、連続して清和会が首相を輩出したことに加え、2012年から安倍氏が8年間も政権を維持する間に、自民党内の力関係は完全に逆転していた。しかし、今回、久しぶりに宏池会を中心とする政権が成立したことで(宏池会政権としては宮沢政権以来約38年ぶりのこととなる)、保守本流を再結集し再び党内の主流派を形成しようとの動きが見られると角谷氏は言う。
同じく宏池会から枝分かれした旧谷垣グループ(有隣会)も、現時点ではそこの所属議員は無派閥という扱いになっているが、中谷元氏らを中心に新たな派閥として名乗りを上げる計画があると角谷氏は言うが、こうした一連の動きが即「大宏池会構想」につながるかどうかについては、角谷氏はやや懐疑的だ。
その理由として角谷氏は、派閥が大きくなりすぎると、ポストが回ってきにくくなり、内紛が起きやすくなることをあげる。大宏池会としていつでもまとまって行動できる関係を維持しながら、派閥としては別々に存在している方が、現行の制度下では有利になる。
いずれにしても岸田政権の今後の政権運営の中に、自民党内の路線対立という座標軸が入ってくることだけは間違いなさそうだ。そして、自民党がこのような形で内輪の政争に現を抜かしていられるのも、野党が現実の脅威となり得ていないからに他ならない。野党はこの状況をどう考えているのか。
政界を幅広く取材している政治ジャーナリストの角谷氏に、党・閣僚人事から見えてきた岸田政権の性格や今後の政局の展望をジャーナリストの神保哲生が聞いた。