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福島第一事故の反省はどこへ行ったのだろうか。
安倍政権は4月11日、原発を重要な「ベースロード電源」と位置づけ、原発の再稼働を進めていくことを謳ったエネルギー基本計画を閣議決定した。
安倍政権は当初1月中の閣議決定を目指していたが、小泉純一郎元首相の後押しを受けた細川護煕元首相の都知事選出馬によって、原発が選挙の争点をなることを避けるために、閣議決定が先延ばしされていた。その間、河野太郎氏率いる党内の脱原発派からも異論が出るなどしたが、結局最終的にはほぼ原案通りの計画となった。
これで福島第一原発事故以来、脱原発と原発推進の間で綱引きが行われてきたエネルギー政策に、一定の決着を見ることになる。日本の原発回帰が正式に決定したわけだ。
これに先立つ4月3日、北海道函館市が、津軽海峡を挟んだ対岸の青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者のJパワーと国を相手取り、建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こしている。自治体による原発の差し止め訴訟はこれが初となる。
この訴訟は安倍首相が国会などで繰り返し述べ、エネルギー基本計画にも謳われている「世界で最も厳しい水準の規制基準」がいかに空理空論であるかを端的に示している。
函館氏の工藤寿樹市長は、4月10日に行われた外国特派員協会の会見で「原発から30キロ圏内の自治体は避難計画を策定する義務を負っているにもかかわらず、原発については何ら発言権がない。危険だけを押しつけられるのはおかしい」と語る。
工藤市長はまた、避難計画の策定が原発再稼働の前提にはなっていないことの矛盾も指摘する。「UPZ(30キロ)圏内の自治体は避難計画の策定は義務づけられているが、避難計画が策定されていなくても、原発の再稼働はできるというのが原子力規制委の見解だ。」
アメリカではニューヨーク州のショーラム原発のように、避難計画が不十分であったために稼働が認められず、一度も稼働しないまま廃炉になったものもある。避難計画がないまま原発の建設や再稼働が可能な日本の安全基準のどこが世界で最も厳しい基準だと言うのだろうか。福島原発事故で事故の際に多大な影響が及ぶことが実証されている30キロ圏内の避難計画がないまま、原発の稼働を認めることは、事故などあり得ないことを前提とした安全神話の復活に他ならない。
ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、勝算なき原発回帰の正当性を問うた。