日本が原発依存から脱却すべきこれだけの理由
原子力資料情報室事務局長
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安倍政権は原発再稼働の判断を規制委に丸投げすることで、政治的な判断から逃げているように見える。しかし、原発を再び動かすのであれば、クリアしなければならない政治的な条件が他にもある。そこから逃げたままの再稼働は、責任の所在を曖昧にし、いざというときの対応にも不安を残す。
東日本大震災と福島第一原発事故から3年目となる3月11日を前に、安倍首相は前日の10日、参議院予算委員会で原子力規制委員会が安全と判断した原発については再稼働させる意向を改めて強調した。「(再稼働するかどうかを)判断するのは避難計画ではなく、原子力規制委員会が世界で最も厳しい基準に乗っ取って審査を進め、安全であると判断した段階において、我々は再稼働を進めていくことになる」と語り、政府としては原子力規制委の審査をパスした原発については、避難計画の有無に関わらず再稼働していく意向を示したのだ。
これに対して、同日午後、日本記者クラブで開催された討論会に、原発事故を調査した3つの調査委員会の元委員長らが揃って参加し、政府の再稼働へ向けた動きを批判した。国会事故調の黒川清元委員長は「五層の防護をまだほとんどやってないところがたくさんあると思う。例えば二つ逃げる道があるか、片方が埋められたらどうするのか」と語り、避難計画が不十分なまま再稼働にひた走る安倍政権の姿勢に注文をつけた。
民間事故調の北澤宏一元委員長は、「(原発の再稼働を迫られているというが)一体誰が再稼働を迫るのか。事故の確率はゼロではない。もし起きたら日本は世界の笑い者。そして日本は守銭奴の国であったという歴史しか残らない」と語り、政府の拙速な再稼働へ向けた動きを牽制した。
政府事故調の畑村洋太郎元委員長は福島第一原発の事故で「ありうることは起きる、そしてありえないと思うことすらも起きるということを認めないといけない。審査、検討して大丈夫だということ自身が、“どんなに考えても気づかない領域が残る”という今回福島で学んだことを無視しているように見える」として、事故が起きることを前提に安全対策を施す必要があることを強調、現在の政府の再稼働に向けた姿勢が、事故前のそれと変わっていないと批判した。
討論会には米原子力規制委員会のグレゴリー・ヤツコ元委員長も参加し、「事故は不可避で避けられない。原子力を使い続けるのであれば、事故が起こっても発電所の外のコミュニティに影響を与えるような原子力は認めてはならない」と語り、自ら被災地を訪れた経験をもとに、事故が起きた際の放射能対策の重要性を訴えた。
仮に原発を再稼働するのであれば、政府は原発を動かす場合のリスクとメリット、動かさない場合のリスクとメリットをはっきりと国民の前に示し、その上で再稼働というのであれば、なぜ再稼働が国益に資すると判断するのか、その根拠を示さなければならない。むしろそれを隠し、その判断を規制委に丸投げするなど言語道断ではないか。原子力規制委に原発再稼働の責任も、いわんや万が一事故が起きた場合の責任も負えるはずがない。そもそも法律で彼らには再稼働を決定する権限がないのだ。規制委はあくまで各原発の技術的な基準を審査するだけだ。しかし、原発には技術以外にも膨大な政治的、経済的、倫理的責任が伴うことを、われわれは3年前にいやというほど学ばされたのではなかったのか。
ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、民主主義の基本的な条件を無視したまま原発再稼働に突き進む安倍政権の問題点と、その結果起きうる原発総無責任体制復活のリスクを議論した。