完全版視聴期間 |
(期限はありません) |
---|
警視庁公安部が作成した国際テロ関連の捜査資料と見られるデータが、インターネット上に流出し、プライバシーや信教の自由を侵害されたとして、日本在住のイスラム教徒17人が国と東京都に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は15日、都に総額9020万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
この判決については、あたかも原告側の言い分が認められたかのような報道も散見されるが、この裁判で憲法上の争点として争われた信教の自由の侵害については、裁判所は一顧だにしなかった点は留意する必要がある。
そもそもこの裁判では、被告の東京都(警視庁を所管)が、2010年10月にネット上に流出した114点のデータが公安警察の捜査資料かどうかの確認を拒否していた。この点について東京地裁は、警視庁外事3課が保有していたもので、警察職員が外部記録媒体で持ち出し、ウィニーなどのファイル交換ソフトによって部外に流出したものと認定し、警視庁に個人情報を含む捜査資料を安全に保管する義務があったとして賠償責任を認めた。ただし、国の責任は退けた。
被告の東京都側が争っていた流出したデータが公安警察のものであるかどうか、また流出させたことの責任があるかどうかの2点については、裁判所は明確に原告側に軍配をあげている。
しかし、同じく原告が争っていた、そもそもイスラム教徒だというだけの理由で警察の捜査対象となっていたことが、憲法で保障された信教の自由に違反するのではないかとの主張について、始関正光裁判長は「情報収集は国際テロの発生を未然に防止するために必要な活動」であり、イスラム教徒を監視下に置いたことには「合理的根拠がある」として、原告の訴えを全面的に退けている。
確かに、イスラム過激派が世界各地でテロを起こしていることは事実だ。また、そのターゲットとなっているアメリカと同盟関係にある日本も、テロの対象となる可能性は否定できない。
しかし、それを踏まえた上で、イスラム教徒だというだけで特定の信仰を持つ市民を公安警察の捜査の対象とすることに、問題はないのか。仮にこれを合法とし、有効な対テロ捜査が可能になるとして、その一方で、われわれは何を失うことになるのか。両者を比較衡量した時に、テロの捜査なら無条件で認められるべきなのか。
テロ捜査情報を特定秘密の対象に指定している特定秘密保護法との関係も含め、この判決の意味を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。