この運用基準で秘密保護法の濫用は防げるか
NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長
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内閣官房で特定秘密保護法の原案の作成を担当した礒崎陽輔首相補佐官が12月18日、外国特派員協会で講演し、特定秘密を公表する行為が処罰の対象となり得るとした前週の自民党の石破茂幹事長や中谷元・元防衛庁長官らの発言を明確に否定した。
「この法律で一般市民が秘密取得罪にも秘密漏洩罪にも問われることはない。これが政府の公式見解だ」
礒崎氏はこのように語り、石破、中谷発言を明確に否定した。
しかし、礒崎氏はまた、一般の市民が特定秘密保護法違反に問われる唯一のケースとして、市民が違法性を知りながら公務員を唆(そそのか)して特定秘密を取得したり、取得を試みた場合は罪に問われることがあるとも発言している。特定秘密保護法は未遂や共謀も処罰対象としていることから、仮に秘密を取得しなくても市民が唆し行為だけで処罰を受ける可能性があることは再確認した形だ。
石破、中谷両氏は、記者が報道目的で特定秘密を取得した場合、取得自体は罪に問われないが、それを報じれば罪に問われる可能性があると相次いで発言し、国民の知る権利は侵害しないとしていた特定秘密保護法の解釈に疑問符がつけられていた。
礒崎氏が報道目的かそうでないかを問わず、市民が特定秘密を公表することで罪に問われることはないと明言したことで、石破、中谷発言で表面化した疑問点の一つは解消した形となった。
しかし、同時に懸念されていた唆しについては、そもそもどのような行為が唆しに当たるのかなど裁量の余地が大きいため、濫用の懸念が払拭されたとは言えない。
また、同じ講演で礒崎氏は、政府の違法行為を暴く目的で特定秘密を暴露した場合も罪に問われないと発言しているが、公益通報者保護法と特定秘密保護法でどちらが優先されるかについては、「検察が適切に判断するだろう」と述べるにとどめるなど、依然として同法の本質的な疑問点は残されたままだ。
先週の石破・中谷発言で明らかになった同法の立法趣旨と、この日の礒崎会見で改めて見えてきた同法の本質的な問題点について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。