「一人一票」で日本はこう変わる
弁護士
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最高裁が11月20日、先の衆院選挙の一票の格差をめぐる訴訟で「違憲状態」の判決を下し、選挙を無効としなかったことが、一部では落胆を持って受け止められている。
去年の衆議院選挙に対して、各地の高等裁判所で「選挙無効」や「憲法違反」の判決が相次き、いよいよ最高裁も「違憲」「無効」の判断を下すのではないかとの期待感があったからだ。
しかし、原告の代理人を務める升永英俊弁護士は、「違憲・無効なら勝ちで違憲状態どまりなら負け」のような見方を否定する。問題は違憲・無効かどうかではなく。一票の価値を限りなく1対1に近づけることにあり、最高裁が国会にそれを求めている状態は今も変わっていないからだ。
むしろ、ここで違憲・無効と判断され、一票の価値を2倍以下に押さえた制度を拙速に作らせてしまうことの方が、問題が多かったと升永氏は言う。
今回の判決で最高裁大法廷は1票の価値に最大で2.43倍の格差があった先の選挙について、「構造的な問題は解決されていない」として、格差の解消に向けた抜本的な取り組みを国会に求めている。
升永氏はまた、これまでの一票の価値訴訟が、憲法14条の法の前の平等原則に反するという観点のみから争われてきたことは、戦略的な誤りだったと自身の戦略を振り返る。日本国憲法は前文などで国民を主権者と明示した上で、国民が国会を通じてその主権を行使するとしており、更に56条2項で「両院の議事は出席議員の過半数でこれを決する」としている。升永氏はこれらの条文を引用した上で、これは主権者たる国民が国会を通じて主権を行使しようとした際に、国会が一人ひとりの国民の主権を反映した構成になっていなければ、それができないと指摘。憲法は14条の「法の前の平等」のような一般論だけでなく、具体的に一票の格差を限りなく1対1にすることを求めていると解するべきだと指摘する。
最高裁の「違憲状態」判決をどうみるべきなのか。原告の升永弁護士と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。