2013年11月09日公開

メニューの偽装防止に政府の規制は必要か

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概要

 全国各地の有名ホテルや百貨店が、メニューに表示されたものと異なる食材を使用していたことが明らかになったことで、政府までが本格的に乗り出す姿勢を見せている。
 確かに、成形肉につなぎとしてアレルギーの原因物質となる大豆などが使われていることが表記されていないことは問題だろう。アレルギーは場合によっては生死にかかわる重大な影響がある。
 しかし、もともとレストランなどのメニュー表示と加工食品などに義務づけられている食品表示には、目的の上で違いがある。加工食品の表示義務はアレルギー物質を識別したり、添加物の使用の有無を判断するためのもので、グルメ志向の消費者の要求を満たすことではない。
 無論、外国産の食材を国産と偽ってメニューに表示したり、安価な食材を使っておきながら、それを別の高価な食材と偽ることは好ましいことではない。消費者の信頼を裏切る行為であることも間違いないだろう。
 しかし、それを法制化することで、例えばメニューに「おふくろの味」などのうたい文句が使えなくなるのは寂しすぎるのではないか。「おふくろの味」を謳った商品を中年男性が作っていた場合、違法になるのだろうか。
 一連のメニュー偽装から見えてくるものは多い。例えば、われわれはバブル以降のグルメ志向だけは残っているが、もはやそれを賄うだけの財力を持っていないのではないか。一連の偽装を行ったホテルチェーンが、もしメニュー通りの食材を使っていたら、果たしてそれは一般消費者の手の届くものだったのだろうか。
 あるいは、われわれは何でもいいから怒りをぶつける対象を探してはいないか。回転寿司の寿司ネタの中に表示とは異なるものが多く含まれていることを、われわれはとうの昔から知っていたはずではないか。にもかかわらず、それは問題にせず、今回のホテルやレストランの誤表記はこうまで大きく問題にするのはなぜか。安い回転寿司は庶民の味方で、ホテルや百貨店の価格帯はそれよりも高いから許せないということなのか。
 一連のメニュー偽装問題では、百貨店やホテルの側も、偽装が明らかになったことで大きく信用を落とした。一度失った信用の回復は容易ではないだろう。今後、レストランを利用するわれわれ消費者が、常に疑いの眼差しでメニューを見ることは、レストラン側も重々承知しているはずだ。
 政府というものは、常に民間に介入する機会をうかがっている動物だ。それが権限となり、利権にもなる。ここで政府に介入させて、法規制を設けた場合、それから得られるものと失うものは何か。今一度冷静になって再考してみるべきではないだろうか。
 メニュー偽装問題と政府介入の是非について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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