関東大震災から100年の節目に考える地震と原発と日本
元裁判官
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福島第一原発の4号機4階部分にある使用済み燃料プールに残っている1533本の燃料棒。万が一これがすべて溶融するような事態に陥れば、福島県はおろか東日本全体、人間が住めなくなる可能性すらある。それほど重大な影響のある燃料棒が、補強されたとは言え、地震と津波、そしてその後の3号機の水素爆発によって激しく損傷を受けた建屋の4階に、事故後2年半が経った今も置かれたままになっている。もし、今大きな地震に見舞われ、燃料プールが損傷を受けて水が流出するようなことがあれば、あるいは建屋が倒壊し、プールがひっくり返るような状態になって燃料棒が大気中に露出されれば、福島第一原発は全く手が付けられない状態に陥ることは必至なのだ。
そこで、その燃料棒を何とか4号機建屋4階のプールから取り出し、より安全な保管場所に移す作業が、どうしても必要となる。これは損傷を受けた建屋の中に多くのガレキとともに沈んでいる1533本の使用済み燃料棒を一本一本臨時に設置されたクレーンで取り出した上で、キャスクと呼ばれる別の容器に収め、そのままそれを地上レベルに新たに建設されたプールに移動する作業だ。万が一、作業の途中で燃料棒の入ったキャスクを落下させるようなことがあれば、キャスクが壊れて、核燃料棒が大気に露出する危険性もある。
民主党辻元清美氏は11月6日の衆議院経済産業委員会で、東京電力の広瀬直己社長や原子力規制委員会の田中俊一委員長に対し、キャスクを建屋の4階がある32メートルの高さから落下させる実証実験の実施を求めたが、両氏ともに落下実験の必要性は認めなかった。キャスクが32メートルの高さから落下した場合、本当に核燃料は露出しないのだろうか。
ビデオニュース・ドットコムではとりわけ海外のメディアが重大な関心を寄せている「4号機問題」を以前から繰り返し取り上げてきた。9月には元国会事故調の委員を務めた田中三彦氏をゲストに<マル激トーク・オン・ディマンド第647回(2013年09月07日)「東電に任せてる場合ですか」ゲスト:田中三彦氏(元国会事故調委員・科学ジャーナリスト)>を放送した。
しかし、今あらためて問いたい。本当に東電に任せている場合ですか、と。
この作業はいずれにしても誰かがやらなければならない。しかも、できるだけ早くやる必要がある。今のままの状態で大きな地震に見舞われ4号機プールが壊れた時には、もはや取り返しがつかないことになることがわかっているからだ。
それにしても、場合によっては日本の命運を握るといっても過言ではないこの作業を、東電という一企業に任せるのは、あまりにも無謀ではないか。東電は事実上破綻状態にあり、社員のモラールも決して高いとは言えない。汚染水問題でも失態を続けているし、情報公開も常に不十分だ。そのような企業に、これだけ重大な作業を任せて、本当にそれをやりきるだけの能力があるのか。何か問題があった時に情報公開も含めて適切な対応が期待できるのか。
実際に作業に当たるのが東電か、あるいはその関連企業になるにしても、4号機の燃料棒の取り出しは、その責任の重大さと失敗した場合の影響の大きさを考えると、どう見ても国が責任を持ってその任にあたるべき作業ではないのか。
一番肝心な時に誰も責任を取ろうとしない日本の伝統的な体質が、まさにこの4号機問題で露呈しているのではないか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。