この運用基準で秘密保護法の濫用は防げるか
NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長
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機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案について、与党の自民党と公明党が国民の「知る権利」や「報道・取材の自由」への配慮規定を盛り込むことで10月16日、合意に達した。政府は来週25日には閣議決定の上、国会に提出する予定だと言う。今国会で成立する可能性が現実になってきた。
安全保障や外交、テロ対策に関連した情報を守るために、それを漏らした公務員に、一般的な守秘義務より厳しい罰則規定を設ける必要があるという主張は、ある程度は理解できる。
しかし、政府が主権者である国民から合法的に情報を隠すことを認める法律には、秘密に指定する対象となる情報の明確な基準と、少なくとも事後的にその基準が守られていたかどうかをチェックする機能が不可欠だ。明確な基準が無い場合、政府にとって都合の悪い情報が一旦「秘密」に指定されてしまえば、もはや国民にはその情報が秘密に指定されるべき情報だったかどうかを判断することが不可能になってしまう。
今回、自公両党が合意した改正案には雑則として秘密の指定に「統一的な運用を図るための基準を定める」との文言が入った。この点は一歩前進したと言える。
しかし、この条文では「基準」がどの程度厳格なものになるかが現時点ではまったく不明な上に、その基準が守られたかどうかをチェックする機能が法案には盛り込まれていない以上、この条文は全く効力を持たないと言わざるを得ない。
政府に情報を統制する権限を与える法制度は、一旦それが認められてしまうと、統制されている事実そのものが国民から見えなくなってしまうという、とても危険な特性がある。制度の暴走を防ぐためには、基準の明確化と事後チェックだけは何をおいても不可欠だ。
国民の知る権利や報道の自由が尊重されることは重要だが、現行の特定秘密保護法案はこのようにより本質的な問題を抱えており、それらは何一つ解決されていない。「知る権利」や「報道の自由」を当て馬のように使い、情報統制をしたい側にとっては本丸となる「チェック機能」を排除した法案を出してくる政府の手口と、その手のひらの上でまんまと踊ってしまうマスメディアの問題点を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。