五輪談合事件に見る、捜査能力の劣化で人質司法に頼らざるをえない特捜検察の断末魔
弁護士
完全版視聴期間 |
(期限はありません) |
---|
東京電力福島第一発電所の事故をめぐって、被災者らが東京電力の役員ら33人の刑事責任を告発していた事件で、東京地検は9月9日、不起訴処分を決定したが、検察は本気で捜査を行ったのだろうか。
記者会見した稲川龍也東京地検次席検事は十分な捜査を行った結果、嫌疑無し、もしくは嫌疑不十分で、起訴には至らなかったことを繰り返し強調した。
しかし、「十分な捜査」の中身を問われると、一貫して「捜査の内容は明らかにできない」と答えるにとどまり、なぜ強制捜査を行わなかったのか、現場検証は行われたのか、何人の捜査員が投入されたのか、何人の参考人から話を聞いたのか、どのような専門家から意見を聞いたのか、などの質問には、一切答えなかった。
また、今回の不起訴処分では福島で告発された事件が、処分決定の直前に東京地検に移送され、東京地検で不起訴処分が下されるという、不可解な処理が行われた。福島では1万4000人を超える大原告団が組織され、東電の新旧幹部、原子力安全委員会幹部、原子力安全・保安院幹部など合わせて33人を告発したのに対し、東京では戦場アナリストの高部正樹氏らが、当時の菅首相、枝野官房長官、海江田経産大臣ら6人を告発していたほか、ジャーナリストの広瀬隆氏らが東電幹部らを告発しているが、その規模は福島が遥かに東京を上回っていた。にもかかわらず、福島の事件を東京に移送して不起訴処分としたのは、なぜなのか。十分に納得のいく説明がない以上、福島で検察審査会に申し立てされることを防ぐためだったとの批判が出るのは当然だろう。
また、この事件を東京地検では公安部が担当している点についても、その理由を会見で稲川次席検事に問うたところ、捜査の内容に関わることなので、教えられないとの回答だった。
レベル7という未曾有の重大原発事故をめぐる刑事告発に対して、どれだけの捜査を行った結果不起訴処分としたかをまともに説明できない検察のあり方と、刑事事件として告発する以外に事故原因の真の究明が期待できない不毛な制度を引きずったまま一向に改革が行われない日本の司法制度の問題点を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。