ハリス対トランプはアメリカに何を問うているのか
成蹊大学法学部教授
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ワシントンの米連邦高裁は8月13日、原子力規制委員会に対し、ネバダ州ユッカマウンテンの使用済み核燃料の最終処分場の建設計画について、この計画を認可するかどうかの審査を進め、速やかに決定を下すよう命ずる判決を下した。
建設が実現すればアメリカで初の使用済み核燃料の最終処分場となるネバダ州ユッカマウンテンの最終処分場計画は、2002年にブッシュ政権が正式に決定していたが、09年に地元の反対などを理由にオバマ大統領が計画の中止を表明していた。しかし、この決定に対し、核燃料の処理施設を抱えるサウスカロライナ州やワシントン州などが、中止は違法であるとして提訴していた。
オバマ政権はユッカマウンテン計画を正式に中止にするために、ユッカマウンテンの処分場建設の許可申請の撤回を原子力規制委員会に申し出たが、法的な根拠がないことを理由に撤回は拒否されていた。しかし、オバマ政権が規制委員会に対して、この申請を審議するための予算をつけなかったために、実質的な審査は行われず、この問題は棚上げされてきた。
この日の判決で連邦高裁は、原子力規制委員会には審査を止める法的な権限はないとして、法律に則って審査を進め、速やかに可否を決定するよう命じるとともに、連邦議会に対してもそのための予算を与えるよう求めた。
現在、世界で31ヶ国が原発を保有しているが、使用済み核燃料の最終処分場の建設が決定している国はフィンランドのみ。フィンランドのオルキルオト島では、早ければ今年中にも最終処分場が正式に認可され、2015年の建設開始、2025年からの操業を予定している。また、スウェーデンも最終処分場の候補地をフォルクスマルク村に絞り込み、現在、建設許可の申請が行われているが、その他の国ではいずれも最終処分場建設の見通しはたっていない。
アメリカは104基の原発を抱える世界最大の原発大国だが、これまで最終処分場がないまま原発が運転されてきた。オバマ政権が一旦は振り出しに戻したかに見えたユッカマウンテンの最終処分場計画をめぐる論争が、この判決を機に再燃しそうだ。
日本にとっても他人事ではない最終処分場問題を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。