「防衛政策の大転換」で日本はハイブリッド戦争に太刀打ちできるか
元陸将・陸上自衛隊東北方面総監
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集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法案の参院の審議が大詰めを迎える中、最終局面で法案に重要な付帯決議がつけられていた。野党による問責や不信任案などを連発したぎりぎりの抵抗が続くなかで行われた修正協議に対しては、「野党の分断工作」「強行採決と言われないための姑息な小細工」などと批判を受けたが、実際は法案の核心に関わる重要な変更点が含まれていた。
修正協議は自民・公明の与党と、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の3野党の間で行われた。合意した修正内容を法案に反映させるためには再度衆議院での採決が必要となることから、今回は付帯決議として参議院で議決したものを、閣議決定することで法的効力を持たせる方法が採用された。
3野党といっても、いずれも議員が1名から5名しかいない弱小政党であり、その多くはもともと自民党から分派した議員だったこともあり、野党陣営から見れば敵に塩を送る行為との批判は免れない面はあったが、だとしても実効性のある修正を実現したことについては、名を捨てて実を取りにいったと肯定的に評価することもできるものだった。
具体的な付帯決議の内容としては、武力攻撃には国会の例外なき事前承認が必要とされた点や、武力行使は国会の終了決議があれば速やかに終了しなければならないこと、提供できる弾薬は拳銃、小銃、機関銃などに限ること、自衛隊の出動は攻撃を受けた国の要請を前提とすることなどが含まれた。
自衛隊の派遣には例外なく国会の事前承認が必要になったことで、来年の参院選で与野党が逆転すれば、事実上自衛隊の派遣や武力行使ができなくなることになった。
また、存立危機事態という抽象的な概念では、何が達成されれば武力行使を終了するかの基準が曖昧で戦闘が泥沼化する恐れがあるとの批判があったが、付帯決議で国会が武力行使の終了を決議すれば直ちに終了することが定められたことで、少なくとも一つの客観的な出口が提供された。
弾薬提供の規定についても、国会審議では「論理的には核兵器でも提供できる」などといった暴論が飛び交ったことから、あくまで緊急の場合に兵士の身を守るための拳銃や小銃の弾薬に限定することが盛り込まれ、大量破壊兵器はもとよりクラスター爆弾や劣化ウラン弾などの戦略的な弾薬は含まれないことも明記された。
ただし、付帯決議に集団的自衛権の行使には攻撃を受けた国からの要請が必要となることが明記されたことで、国家の存立が危ぶまれるぎりぎりの事態で最後の手段として行使されるべき集団的自衛権が、その実は他国からの要請がなければ使えないという、「存立危機事態」という概念そのものの矛盾点も露呈することとなった。
「敵に塩を送る行為」との批判を受けながらも、ある程度実効性のある妥協や修正を引き出した今回の付帯決議をどう見るべきかを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。