結局国葬の何が問題なのか
東京都立大学法学部教授
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1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒業。同大学法学政治学研究科助手、首都大学東京都市教養学部准教授を経て16年より現職。著書に『憲法の急所─権利論を組み立てる』、『自衛隊と憲法─これからの改憲論議のために』など。
「新規制基準は緩やかにすぎ、合理性を欠く。」
福井県高浜町にある関西電力高浜原発3、4号機の再稼働をめぐり、住民らが運転を禁じる仮処分を求めていた裁判で、福井地裁の樋口英明裁判長は4月14日、住民の訴えを認め、原発の再稼働を禁じる決定を下した。
樋口裁判長は原子力規制委員会が原発再稼働の可否を決める根拠となっている新規制基準は「緩やかにすぎ、合理性を欠く」と指摘。新基準を満たしても安全性は確保されないとして、現状のままでは運転はできないと判断した。高浜原発は今年2月に再稼働に向けた規制委の主な審査にパスしていた。
判決では新基準で安全性は確保されないと結論づけ、住民らの「人格権」が侵害される危険性があると認めた。
一般の判決とは異なり、仮処分決定は直ちに法的な拘束力を持つため、今後の司法手続きでこれが覆らない限り、仮に関電が控訴したとしても、高浜原発3、4号機は再稼働はできない。直ちに原発の運転を差し止める司法判断は、これが初めて。
関電は今年11月にも同原発の再稼働を目指していたが、この判決により、11月の最稼働は難しくなったと見られる。
この日の福井地裁の判断は、多くの市民が原発に対して抱いていた不安を代弁したものとなった。
福島第一原発の事故を受けて政府は新たな原発の安全基準を策定した。安倍首相や田中俊一原子力規制委員長は、この新基準が「世界で最も厳しい基準」であることを、繰り返し強調してきた。
しかし、新基準が想定している地震の最大の揺れが、必ずしも十分とはいえないことや、福島の経験から、万が一事故が起きた場合、その影響は広範囲に及ぶにもかかわらず、実行可能な避難計画が策定されていないことなどに対して、特に原発周辺の住民から不安の声があがっていた。
今回の差し止め請求も、高浜原発から50から100キロ圏内に住む福井、京都、大阪、兵庫4府県の住民9人が起こしたものだった。
他にも判決は、使用済み核燃料プールが原子炉のように堅固な施設に囲われていないことを指摘するなど、地震大国の日本で原発を運転することによって生じ選る本質的な問題を多く指摘したものだった。
人格権の侵害を根拠に原発の運転を差し止める判決が下ったことの意味を、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、憲法学者の木村草太と議論した。