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パチンコが換金を目的としたれっきとしたギャンブルであることは、恐らく日本人であれば誰もが知っていることだろう。しかし、競馬などの公営ギャンブル以外は換金目的の「賭博」が禁止されている日本では、パチンコも建前上は景品をもらうための遊戯であり、別途その景品を買い取ってくれる業者があるために結果的に換金が可能になっているというとてつもない論理で、日本ではこれまでパチンコの換金が容認されてきている。
しかし、ひょんなことからその「誰もが知っていながら、誰も口にしない」パチンコの換金問題が、政治の場で議論される羽目になってしまったようだ。
自民党の高村正彦副総裁や野田聖子総務会長らが発起人に名を連ねる自民党の議員連盟「時代に適した風営法を求める会」が、パチンコの換金額に1%の課税するパチンコ課税の導入を議論し始めた。1%の課税でも2000億円にもなるパチンコ課税を、安倍政権の成長戦略の中のキモの一つである法人税減税の穴埋めに使いたいのだという。ところが、パチンコは法的には換金はしていないことになっている。そこで、部会の会合に呼ばれた警察庁の担当官が、「パチンコで換金が行われていることは知らない」といった趣旨の発言をしていたことが、8月25日付の朝日新聞で報じられ、パチンコの換金問題が、期せずして注目を集める結果となってしまった。
日本の法律ではパチンコ店が出玉に対して現金を渡すことは無論のこと、一旦景品として出した商品をパチンコ店が買い取ることも風営法で禁止されている。そのためパチンコ店では出玉をまずボールペンなどの特殊景品と交換し、店舗を出た客が古物商の許可を受けて営業する別会社の景品交換所で景品を現金と交換することで、事実上の換金が行われている。景品交換所が買い取った特殊景品は景品卸問屋を介してパチンコ店に戻される「3店交換方式」により、建前上、パチンコ店はあくまで出玉を景品と交換しているだけで、その先は古物商と景品卸問屋間の取引であり、そこにパチンコ店は関与していないという建前を無理矢理作っている形になっている。
当初パチンコは在日朝鮮人の経営者が多く、戦後、社会的弱者の保護という大義名分で黙認されていた側面があったといわれているが、今やパチンコ店は全国に1万2千店も存在し、総売上も18.8兆円にのぼる巨大産業に成長している。パチンコ業界への警察からの天下りも多く、業界大手のダイナムが香港市場に上場するなど、もはやパチンコに保護の対象としての要素は見いだせそうにない。その反面、爆裂機などによって射幸心を煽られることによるパチンコ中毒や、パチンコ店駐車場で毎年のように熱中症で子供が死亡する事故が起きるなど、パチンコにまつわる社会問題も少なくない。
子どもでも違法とわかるようなパチンコの換金を、今なお日本の社会が容認しているのは、日本人の寛容のなせる技なのだろうか。それとも他に何か理由があるのだろうか。夜間にライトをつけずに自転車に乗っていたというだけで延々と警察官に絞り上げられる日本にあって、18兆円の違法行為に対する当局のお目こぼしを抵抗なく容認できる日本人の感性とは何なのかを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。