日本は次の感染症への備えはできているか
弁護士
1947年長野県生まれ。73年京都大学医学部卒業。81年オーストラリア国立大学ジョン・カーティン医学研究所博士課程修了。PhD(免疫学)。スイス・バーゼル免疫学研究所メンバー、(財)東京都臨床医学総合研究所・免疫研究部門部長、大阪大学大学院医学研究科教授などを経て、現在は大阪大学名誉教授。著書に、『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』、共著に『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か』など。
私たちの身体には病原体の侵入や拡散を防ぐためのさまざまな仕組みが存在する。皮膚表面の角質や、気道や腸管内部の粘液、唾液、涙などの「物理的なバリア」には、「化学的バリア」として機能する殺菌性の物質が含まれ、相互的に機能している。そしてそれらの壁を乗り越えて入ってきた外敵に対しては、白血球が殺菌性物質を放出したり食べたりして戦ってくれる。これは「細胞性バリア」という。物理的、化学的、細胞性バリアを「自然免疫機構」と呼ぶ。そして、「自然免疫機構」が破られた時に出てくるのが、2種類の白血球とリンパ球から成る「獲得免疫機構」だ。これは一度出会った病原体を記憶する「免疫記憶」という能力を持っていて、特定の病原体を選択的にやっつけてくれる。ワクチンはこの機能を利用したものだ。
今、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスは人類にとっては未知の存在、つまりこれまで出会ったことのない病原体だった。だから、まだわれわれには新型コロナウイルスに対する免疫記憶が備わっていないため、「獲得免疫機構」には期待できないが、とはいえ自然免疫機構は第一線の防御として常に働いている。
免疫学が専門の宮坂昌之・大阪大学名誉教授は、高い免疫力を維持するためには、栄養や睡眠をしっかり取り、暴飲暴食を避け、ストレスを貯めず、適度の運動をすることで、免疫レベルをあげておくことが、新型コロナから身を守ることにつながると語る。
免疫学の第一人者の宮坂教授に、そもそも免疫とはどのようなもので、いかに機能するのか、新型コロナに対する免疫は獲得できるのか、ワクチンはいつ頃できるのか、どうすれば免疫力をつけられるのか、などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。その他、PCR検査がなかなか増えないことに対する安倍首相と専門家会議の説明をどう見るかなど。