トランプ7300万票の意味を考える
慶応義塾大学SFC教授
1967年北海道生まれ。90年上智大学外国語学部卒業。92年ハーバード大学大学院東アジア地域研究科修士課程修了。97年同大学大学院人類学部博士課程修了。博士(社会人類学)。ケンブリッジ大学、英オックスフォード大学、ハーバード大学客員研究員などを経て、2006年より現職。著書に『アメリカのジレンマ・実験国家はどこへゆくのか』、『リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義』など。共著に『反グローバリゼーションとポピュリズムー 「トランプ化」する世界』など。
11月のアメリカ大統領選挙に民主党の公認候補として出馬する候補者選びは、有力候補が次々と脱落した結果、ジョー・バイデン元副大統領とバーニー・サンダース上院議員の2候補に絞られた。
出だしのアイオワやニューハンプシャーで大きく出遅れたバイデンだったが、選挙戦から脱落したピート・ブティジェッジ、エイミー・クロブシャーらの民主党主流派候補が相次いでバイデン支持を打ち出したことで勢いを取り戻し、14州で同日に予備選・党員集会が行われる3月3日のスーパー・チューズデーで当初独走態勢にあったサンダースを一気に追い抜きトップに躍り出た。
サンダースが首位を走り始めてからの民主党は、サンダース包囲網のような様相で、各候補や党の重鎮たちがバイデン支持を打ち出している。バイデン支持者たちは、民主社会主義者を自認するサンダースの主張する政策は急進的すぎて、本選でトランプに勝てないことを理由にするが、世論調査では40歳以下の民主党員はサンダース支持がトップを占めている。その一方で、40歳以上ではバイデン支持が圧倒的だ。
アメリカの若者は「ミレニアル社会主義者」と呼ばれるほど、社会主義に対する抵抗感が弱く、またシェアエコノミーとも親和性が高い。加えて大きな格差を生んできた資本主義の欠点を痛感している人も多く、サンダースの主張する政策に違和感を覚えない傾向が強い。
しかし、学生ローンに苦しみながらそれを完済し社会の競争に勝ち残った結果、ようやく余裕ができた中高年にとっては、学生ローンの返済免除や公立大学の無償化を謳うサンダースは、感情的に受け入れにくい面もある。
しかし、中道かつ穏健な政策を主張するバイデンで、本当にトランプに勝てるのか。
今週のマル激は、なぜ民主党はサンダースをそうまで敵対視するのか、エリザベス・ウォーレンはジェンダー差別の犠牲者だったのかなどを検証しながら「バイデンの方がトランプに勝てる」という民主党主流派の主張が本当なのかどうかについて、アメリカ取材から帰国して間もない慶應義塾大学の渡辺靖教授と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。