末期症状を呈する自民党政治を日本の終わりにしないために
元経産官僚、政治経済アナリスト
1967年東京都生まれ。90年立教大学文学部史学科卒業。97年上智大学大学院文学研究科史学専攻修了。博士(史学)。神奈川県立外語短期大学教授、関東学院大学文学部教授などを経て2015年より現職。著書に『ヨーロッパ近代史』、『立憲君主制の現在・日本人は「象徴天皇」を維持できるか』など。
10月22日に即位礼正殿の儀が執り行われ、世界各国から集まった国賓を前に今上天皇の即位が公に宣明された。これをもって、約200年ぶりとなる平成の天皇の生前退位に伴う皇位継承は滞りなく完了した。きたる日曜日には、当初即位礼と同日に予定されていた祝賀パレードも執り行われる予定だ。
皇位継承が無事に済んだことは喜ばしいことだが、とは言え日本の天皇制は多くの難題を抱えたままだ。何と言っても世襲による男系男子の皇位継承しか認めていないため、お世継ぎが悠仁親王一人しかいない。同世代の皇族はいずれも女性ばかりだ。今回の生前退位は平成の天皇が高齢のために象徴としての公務をまっとうすることが困難になったことを受けたものだが、今後、秋篠宮家の二人の女性親王が結婚して臣籍降下することになれば、ごくごく少人数の皇族に多くの公務負担がのし掛かることは目に見えている。日本人が本気で皇室を護っていく気があるのであれば、女性宮家の創設や女系天皇を可能にする皇室典範の改正は待ったなしの状況だと言っていいだろう。
世界には今、王室や皇室など何らかの君主をいただく国が28ヶ国ある。世界には約190の国があるので、君主を持つ国は全体の6分の1以下しかないことになる。君主の中には政治的にも強い権限を持つ絶対君主もいるが、今日そのほとんどは政治的な力を持たず象徴的な存在にとどまる立憲君主だ。
今日、経済のグローバル化が進み、ヒト、モノ、カネが国境を越えて自由に動くようになった結果、世界の多くの国では行き過ぎた自由主義・資本主義に対するバックラッシュとして、民主主義を否定するようなポピュリズムの台頭が見られるようになっている。そうした中にあって、国の統合の象徴であり、自分たちの立ち位置の普遍的な参照点を提供してくれる君主制は、民主主義を安定させる力を持ち得る可能性があると、歴史学者でとりわけイギリスの君主制に詳しい関東学院大学教授の君塚直隆氏は語る。政治権力はなくても、君主の権威や尊厳がそれを可能にするのだと、君塚氏は言う。
しかし、その一方で、君主制の持つそうした力を自分たちの政治目的のために利用しようとする勢力が後を絶たないのも事実だ。日本には過去にそれで失敗した歴史がある。君主制を民主主義を強くするために必要な条件と、それが悪用されないようにするために必要な対策を、われわれは常に注意深く考えていく必要があるだろう。
既に世界の中でも希有な存在となりつつある君主国の中でも、とりわけ長い歴史を持つ日本の皇室は、世界でも稀に見るほど深い敬愛の念を国民から集めていると言われている。その皇室という尊い存在を護り、日本の民主主義を強化していくために、今、われわれが何をしなければならないかを、君塚氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。