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2019年08月03日公開

MMTは日本経済の救世主となり得るのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第956回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

慶應義塾大学ビジネススクール准教授
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1967年千葉県生まれ。92年東京大学経済学部卒業。同年大蔵省入省。99年退官。2001年ハーバード大学大学院経済学研究科博士課程修了。一橋経済研究所専任講師などを経て03年より現職。経済学博士。著書に『円高・デフレが日本を救う』、『リフレはヤバい』など。

著書

概要

 経済が鈍化した時、政府が財政赤字を気にすることなくジャンジャン国債を増発して公共投資を増やすことで景気をテコ入れできれば、どんなにいいだろう。そして、その借金返済のためには、ジャブジャブ通貨を発行して返済に充てればいいなんて話があれば、政治家でなくても大喜びで飛びつくはずだ。

 もちろん、そんなことをすれば、たちまち通貨の価値は暴落し、インフレが頭をもたげ、市民生活が破壊されるのは必至だ。少なくとも経済学の世界でそれは常識だった。だからこそ、これまでそのような政策は御法度とされ、国家の体を成していない破綻国家や独裁国家以外は、そのような政策は採用されてこなかった。

 しかし、今、自国の通貨建ての国債を発行できる国はデフォルトに陥ることを気にせず積極的に国債を発行して景気刺激策を進め、借金の返済は通貨の発行で賄えばいいんだという「経済理論」が、世界中で注目されている。

 それがMMTmodern monetary theory=現代貨幣理論)と呼ばれるものだ。

 経済学の世界では同様の主張は以前から存在したが、既存の経済学の常識をことごとく覆すこのような理屈が本気で受け止められる事はなかった。しかし、MMT論者の一人だったニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が、2016年の米大統領選でヒラリー・クリントンと民主党の公認候補争いでデッドヒートを演じたバーニー・サンダースの経済アドバイザーに就いたことで、アメリカでもMMTの認知度が一気に高まった。

 民主社会主義者を自認し、大学の無償化や奨学金ローンの債務免除などバラマキとも思える再分配政策を主張するサンダースは、その財源として富裕層や企業に対する増税と併せて、ケルトンの主張に沿った国債の増発を主張した。更にアメリカでは、18年の中間選挙で最年少当選を果たして注目を集めたアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員が、その政策「グリーン・ニューディール」の中でMMTの主張を取り入れたことで、アメリカではMMTに対する注目が俄然高まった。

 一方、日本ではそもそも未曾有の金融緩和財政支出をセットで行うアベノミクス自体が擬似MMTと言ってもいいようは性格を持っていたため、これまでMMTが大きく注目されることはなかったが、此度の参院選で大躍進を果たしたれいわ新選組山本太郎氏が、立命館大学の松尾匡教授らのアドバイスに基づいて、MMTの主張を採用する政策を打ち出したことで、MMTへの関心の度合いが高まってきている。

 財政赤字の拡大やそれに伴う金利の上昇を軽視する点や、債務返済のために通貨を発行しても簡単にインフレは起きないとしている点など、既存の経済理論の枠組みをことごとく無視するかのようなMMTの理論的枠組みを、クルーグマン、サマーズといった主流派経済学者たちはいずれも酷評している。しかし、主流派経済学者たちの主張に沿った経済運営を続けてきた結果、リーマンショックは防げなかったし、各国で経済格差が広がり、それが政治不安まで生んでいることも事実だ。既存の経済学の枠組みが今も有効なのかが問われている中での、主流派経済学者たちのMMTに対する一斉批判が、逆にMMTに対する関心を集める結果を生んでいる。

 いかんせん経済は専門性が求められる分野ではあるが、MMTとMMTをめぐる論争は、われわれに多くの視座を与えてくれているので、ぜひ継続的に見ていきたい。まずその第一回目として、行動経済学が専門で、主流派経済学とも一定の距離を置いている慶應義塾大学の小幡績准教授に、MMTとはどのような理論なのか、MMTに対してどのような批判が上がっているのか、そしてなぜ今MMTが注目を集めているのかなどを、アダム・スミス以降の経済学の歴史的な系譜なども紐解きながら、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。

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