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2018年10月20日公開

日本が「ハーフ」にとって生きづらい国だって知ってました?

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第915回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1975年生まれ。ドイツ・ミュンヘン出身。ドイツ人の父と日本人の母を持つ。97年来日、日本企業に勤務するかたわらで99年からコラムニスト活動を始める。2000年に出版した『浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ』がベストセラーに。その他の著書に『ハーフが美人なんて妄想ですから』、『ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』など。

著書

概要

 テレビや広告では見ない日はないといっていいほど、日本人と外国人の両親を持つ、いわゆる「ハーフ」が頻繁にメディアに登場する昨今。タレントやモデルは言うに及ばず、最近はテレビ局のアナウンサーや世界で活躍するアスリートに至るまで、ハーフ全盛時代を思わせる勢いだ。日本人と外国人の間に生まれる子どもの数が、毎年概ね2%程度に過ぎないことを考えると、確かに日本のメディアにおけるハーフの露出度は異常に高いと言えるだろう。

 しかも、テレビに出ているハーフの多くが、得てして美男、美女でバイリンガルでお金持ちという話になっていることもあり、日本ではハーフに対してそういう先入観を持つ人が多い。

 しかし、「ハーフが美人なんて妄想ですから」の著者で自身も日本人とドイツ人を両親に持つコラムニストのサンドラ・ヘフェリン氏は、ハーフは誰もが美人でバイリンガルという先入観が、多くのハーフを苦しめているという。ヘフェリン氏はハーフといっても多種多様であり、男女を問わず、一様に日本人が考えるところの「美人」ではないし、日本生まれ、日本育ちだったり、逆に外国生まれ、外国育ちの人も多いので、決して誰もがバイリンガルとは限らないと語る。

 ヘフェリン氏は著書の中で、批判を覚悟の上で、あるマトリックスを作成して紹介している。それは、美人度と語学力を縦軸と横軸に取り、ハーフを4象限に分けた上で、美人でバイリンガルのハーフを「理想ハーフ」、美人だがバイリンガルではないハーフを「顔だけハーフ」、言葉はできるが美人ではないハーフを「語学だけハーフ」、美人度も低く語学もできないハーフを「残念ハーフ」と名付けたものだ。

 その上でヘフェリン氏は、メディアに出ているハーフのほとんどが「理想ハーフ」のカテゴリーに入るため、純ジャパ(純粋ジャパニーズ。ハーフではない日本人の意)はハーフといえば皆美人で外国語ができるという思い込みがあるが、実際のハーフの大半は、その象限には入らないのだと指摘する。つまり、いわゆる美男、美女ではなく、言葉も日本語しかできないハーフの方が、実際は遙かに多いということだ。

 そのため、外国語、とりわけ英語が喋れなかったり、日本人の目には必ずしも美男、美女とは映らないタイプのハーフは、日本社会で逆に大きなハンディを背負わされることになるとヘフェリン氏は言う。もし日本人の多くが、「ハーフはみんなきれいで外国語もできてお金持ちで羨ましい」なんて考えているとしたら、実情はかなり違っているようなのだ。

 例えば就職でも、純ジャパにとっては外国語を喋れることは大きなプラスの評価対象になるのに、ハーフは外国語が喋れて当然と思われているため、逆に外国語が喋れないハーフは「ハーフなのに外国語ができない」ということで、むしろマイナス評価になる場合が多いのだという。それ以外にも、外見がハーフというだけで、初対面の人に親の国籍だの両親の馴れ初めだの、自分は親のどっちに似ているかなどのプライベートな事をあれこれ聞かれるのが定番になっている。英語ができないハーフが、レストランやファーストフード店で英語のメニューを見せられて当惑する事も日常茶飯事だそうだ。

 実際は日本生まれ、日本育ちのハーフの多くが、自分はただの日本人だと思っている。にもかかわらず、そのような特別な扱いを受けることで、日本を自分の「故郷」とは思いにくい。しかし、かといって、もう一つの母国には住んだこともないし、言葉もできなければ、友達もいない。そんな国を自分の故郷と思うことは難しい。日本生まれ、日本育ちで、日本語しかできなくでも、外国人の血が混じっているというだけで、普通の日本人として扱ってもらえない疎外感を感じているハーフは多いのだという。

 日本で「混血児」の問題が表面化したのは、戦後、GHQが日本に進駐した際に、米兵と日本人女性の間に多くの子どもが生まれた時だった。米兵の多くは妻と子どもを日本に残し帰国してしまったため、「混血児」の多くがシングルマザーで経済的にも苦しい家庭で育つことになる場合が多かった。当時、日本ではハーフという言葉もなく、「混血」という言葉は差別意識を含んだ言葉だった。

 しかし、1980年代のバブルの頃から、メディアで活躍する「格好いい」ハーフタレントが登場し始める。その頃から徐々にハーフという言葉も、現在の「美人でバイリンガル」の理想ハーフのイメージが強調されるようになっていった。それは「混血児」時代と比べるとハーフに対する差別意識の解消には寄与したかもしれないが、逆に「ハーフ=理想ハーフ」という極端なイメージを生むことにつながったのかもしれない。

 しかし、近年、日本人とアフリカ系アメリカ人で長崎生まれのハーフの宮本エリアナさんが、2015年のミス・ユニバース日本代表に選ばれたり、日本人とハイチ系アメリカ人で大阪生まれのハーフの大阪ナオミ選手が今年のUSオープンで優勝したほか、スポーツ界では陸上のケンブリッジ飛鳥やハキーム・サニー・ブラウン、バスケットの八村塁が、芸能界ではフィリピン人と日本人のハーフの秋元才加やバングラディシュと日本人のハーフのローラが活躍するなど、これまで日本人のハーフのイメージを独占していた西洋人と日本人のハーフではない新しいタイプのハーフの活躍が目立つようになり、日本人のハーフに対するイメージも変わってきている。

 結局のところハーフの生きにくさの問題は、日本人が「何が日本人なのか」と考えているかの問題に帰結すると語るヘフェリン氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が、ハーフの視点から見た日本人論を議論した。

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