北朝鮮は世界から孤立しているわけではない
聖学院大学基礎総合教育部准教授
1970年大阪府生まれ。92年同志社大学法学部卒業。99年ソウル大学政治学科修士課程修了。2005年神戸大学法学研究科博士課程修了。政治学博士。日本国際問題研究所研究員、聖学院大学基礎総合教育部准教授などを経て、16年より現職。専門は政軍関係論,安全保障論,朝鮮半島研究。著書に『北朝鮮ではなぜ軍事クーデターが起きないのか?』など。
北朝鮮の外交攻勢が止まらない。
ついこの間まで国際社会を挑発するかのように核実験やミサイル発射実験を繰り返し、アメリカとの間で一触即発の緊張状態にあった金正恩が、平昌五輪への参加を機に態度を軟化させ、トランプ大統領と朝鮮半島の「非核化」について話し合う意向まで示している。4月21日には一方的に核実験とICBMの発射実験の中止を発表するなど、ついこの間までトランプ大統領と罵り合いを繰り広げていたことが、まるで嘘のようだ。
北朝鮮の内情に詳しい聖学院大学の宮本悟教授は、北朝鮮が対話路線に転じたこと自体は、さほど驚くことではないと指摘する。金正恩委員長は2015年から「新年辞」と呼ばれる新年の政策方針で、韓国との話し合いの意向を示してきたからだ。
とはいえ、北朝鮮が南北首脳会談のみならず、米朝首脳会談まで受け入れた背景には、韓国の文在寅政権の役割が大きいと宮本氏は言う。北朝鮮が核やICBMの開発を続ければ、いずれ米国との間で軍事衝突に発展することが避けられない。その場合、韓国にも甚大な被害が及ぶため、韓国としてはそれだけは何としても避けたい。文在寅政権は韓国が独自に北朝鮮に「非核化」を受け入れさせることは困難であるという現実を受け入れ、米朝の話し合いを仲介する道を選んだ。
一連の外交攻勢の結果、来週の南北首脳会談に続き、5月から6月初旬には史上初の米朝首脳会談が予定され、朝鮮半島の「非核化」が本格的に話し合われることになる。米朝の首脳がサシで会い朝鮮半島の「非核化」を議論することが本当に実現すれば、正に歴史的なイベントになるが、この「非核化」が何を意味するのかについては、依然として不透明な部分も多い。北朝鮮は在韓米軍の撤退までは求めない意向を明らかにしているが、かといって北朝鮮が一方的に核やミサイルを放棄することは考えにくい。
金正恩の真の狙いはどこにあるのか。もし首脳会談で米朝関係が好転すれば、朝鮮半島の統一は進むのか。北朝鮮の真意や今後の見通しを、気鋭の朝鮮半島ウオッチャーの宮本氏にジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。