新しい「育成就労」制度の下で日本は外国人労働者に定着してもらえる国になれるのか
京都大学大学院文学研究科准教授(国際連携文化越境専攻)
1971年沖縄県生まれ。琉球大学法文学部卒業。2006年龍谷大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。学術振興会特別研究員を経て08年より現職。
外国人技能実習制度の対象職種に「介護」を加える新たな法律が11月1日に施行された。
外国人技能実習は外国人が働きながら日本の技術を学ぶという触れ込みで農業や製造業を対象に1993年に始まった制度。現在もおよそ23万人がこの制度の下で、技能実習を受けている。建前上は日本の技術移転を目的とする国際貢献の一環となっているが、実態としては単純労働者を受け入れない政府の方針の抜け穴として、主に低賃金分野の人手不足の解消に寄与してきたという現実がある。
11月から施行される「技能実習適正化法」では、かねてより人手不足が深刻化していた介護の分野まで技能実習の対象を広げる一方で、実習生を劣悪な条件で採用する人権侵害に対して罰則を設け、監視を強化することなどが定められている。また、実習の期間も条件付きながら、現在の3年から最長で5年に延長される。介護分野は技能実習の対象分野としては初の「人へのサービス」となる。
外国人技能実習制度をめぐっては、建前の「実習生」と実態の「労働力」というダブルスタンダードの下で、賃金の未払いや不当な雇用契約など数々の問題が表面化していた。事実上、単純労働者の受け入れ制度として機能してきた面があるが、それは日本と対象国の間に経済格差があることを前提としている。実際、この制度の下で日本に技術を学びに来た外国人が、本国でそれを活かせていないケースも多いとされ、制度的には果たして今回の微修正で本質的な問題解決につながるかどうかは疑問も多い。
この問題は最終的には、今後も少子高齢化が進む日本が、どういう社会を作っていきたいのかという問いにぶつかる。外国人労働者を利用すべき労働力としてしか捉えないような制度を続けていけば、本来の目的と実態が益々乖離していくことが避けられないだろう。
技術移転そのものを否定しないが、労働力確保という意味では、日本は技能実習のような弥縫策に頼らずに、移民の受け入れを含めた日本の労働市場のあり方全般について、日頃から議論を積み重ねていく必要があるだろう。また、ひいては日本の社会をより多様性に富んだ社会にしていくことの是非についても、より活発な議論が必要だろう。
技能実習制度の制度改正を機に、外国人労働者の受け入れのあり方や、日本が今後、目指すべき社会像などについて、社会福祉や移民問題が専門で外国人技能実習制度にも詳しい京都大学の安里和晃氏と、ジャーナリストの迫田朋子と社会学者の宮台真司が議論した。