沖縄密約をすっぱ抜いた西山太吉氏がわれわれに残した宿題
ジャーナリスト
1958年東京生まれ。81年東京農業大学農学部中退。同年三推社(現・講談社ビーシー)入社。「ベストカーガイド」編集部員を経て84年よりフリー。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『極上中古外車購入マニュアル』、『高速道路の無料化は愚策か!』など。
「アメリカでは日本車が山ほど走っているのに、東京でシボレーを見たことがない」
選挙戦当初から日本に対してこのような発言を繰り返してきたトランプ大統領が、1月23日の財界人との会合であらためて日本の自動車市場の閉鎖性をやり玉にあげたことで、日本では日米自動車摩擦の再燃が懸念される事態となっている。
日本の政府や経済界は、日本は輸入自動車に関税をかけていないことなどを理由に、日本の自動車市場は完全に開放されており、アメ車が売れないのは日本側の問題ではないと主張している。
しかし、日本の自動車市場は本当に開放されているのだろうか。だとするとなぜ日本でアメ車は売れないのだろうか。これはアメリカ側だけの問題なのか。
モータージャーナリストの国沢光宏氏はアメリカ側にも問題は多いが、日本側にも問題はあると指摘する。
特に国沢氏は、日本の大排気量の自動車に対する懲罰的な課税が非関税障壁となり、アメ車の普及の足枷になっていると語る。もともとこの制度は、日本の自動車産業がまだ十分に成熟していない時代に、国内の自動車産業を守り育成するために、アメリカ車の輸入を制限する目的で導入されたものだったが、その制度はパワフルな大排気量が魅力のアメ車の立場を不利にしていると国沢氏は指摘する。
実際、日本の自動車は現地生産分も含めるとアメリカの自動車市場全体の37%を占める一方で、アメリカ車は日本市場のシェアは0.3%にも満たないという有様だ。しかも、アメリカの自動車市場は外国車が55%のシェアを持つのに対し、日本の輸入車のシェアは6%に過ぎない。「日本でアメ車は売れていないがドイツ車は売れているではないか」と指摘する向きもあるようだが、それもあくまで程度問題で、実際のところ日本の自動車市場における輸入車のシェアはアメリカのそれとは比べものにならないほど小さい。これだけを見ると、日本の自動車市場が無条件にオープンとは言いにくい根拠もあるようだ。
確かに日本の自動車メーカーが米国の消費者の嗜好に合うようにデザインや性能を改良するなど、涙ぐましい営業努力を続けてきた一方で、アメリカの自動車メーカーは日本で本気で車を売ろうとしているようには見えないところも多分にある。
しかし、その一方で、実際は上記の税制の他にも、アメ車を日本に持ってこようとすると、日本独自の安全基準や環境基準に適合させるために大きなコストがかかってしまうなど、様々な障壁が残っていることも事実だ。そうした制度を残したままでは痛くない腹を探られ、結果的に数値目標などの無理難題を押し付けられるのがオチだ。特にトランプ大統領との親密ぶりを隠さない安倍政権としては、トランプ政権からの求めはそう簡単にノーとはいえそうにない。
アメ車が日本で売れないのはなぜか。日米間では車に対する考え方にどのような違いがあるのか。国沢氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。