[米大統領選挙スペシャル]オバマのアメリカを展望する
東京大学大学院総合文化研究科教授
みずほ総合研究所専務執行役員・チーフエコノミスト
1947年東京都生まれ。71年東京大学法学部卒。東京大学大学院法学政治学研究科、プリンストン大学大学院修了。Ph.D(プリンストン大学)。北海道大学大学院法学研究科教授、東京大学大学院総合文化研究科教授などを経て、2012年より現職。北海道大学名誉教授。専門はアメリカ政治。著書に『アメリカニズム-「普遍国家」のナショナリズム』、『ブッシュからオバマへ-アメリカ 変革のゆくえ』、共著に『アメリカ政治外交史第2版』、訳書にジェイムズ・クロッペンバーグ著『オバマを読む-アメリカ政治思想の文脈』など。
トランプ政権が発足し、オバマの8年間が終わった。
初のアフリカ系アメリカ人大統領として、多くの期待を背負って発足したオバマ政権は、積極的な財政出動によってリーマンショック後の金融危機を未然に防いだほか、2000万人の無保険者に新たに医療保険の加入を可能にしたオバマケアを実現するなど、好調な出だしを飾った。オバマ自身も「核なき世界」を提唱することでノーベル平和賞を受賞するなど、期待に違わぬ存在感を示した。
しかし、発足当初こそ60%を超える高支持率を誇ったオバマ政権の支持率は、その後低迷を続け、支持率と不支持率がほぼ均衡する状態が続いた。結果的にそれが、オバマ政権下での議会選挙での民主党の敗北につながり、オバマ政権の選択肢を奪っていた。
初の黒人大統領を選んだ時、既にアメリカ社会はオバマ一人の力ではどうにもならないほど、大きく分断されていた。オバマ政権の最大の功績ともいうべきオバマケアでさえ、反対派にとってはオバマ政権が許せない最大の理由になっていた。
とかく理念主導と批判されることの多いオバマ政権だが、その実績は決して歴代の政権に見劣りするものではない。にもかかわらず、人種的マイノリティーで市民運動や人権を重んじたオバマ政権の後に、全く対称的なトランプ政権が誕生したのはなぜだったのか。
アメリカ政治の専門家で希代のオバマウォッチャーでもある古矢旬氏とオバマ政権の8年を振り返るとともに、トランプ政権誕生に道を開くきっかけを作ったアメリカ社会の分断について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。