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2016年08月27日公開

子宮頸がんワクチン提訴に見る薬害の連鎖が止まらないわけ

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第803回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人
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1962年長野県生まれ。血友病と診断。1980年代に輸入血液製剤によりHIVに感染。1994年大阪HIV訴訟原告団加入。1997年大阪HIV薬害訴訟原告団代表。1999年より現職。現在、厚労省中央社会保険医療協議会(中医協)委員、薬事・食品衛生審議会血液事業部会委員を兼務。

概要

 薬害の連鎖が止まらない。スモン、サリドマイド、薬害エイズ、薬害肝炎・・・。そしてこのたび、子宮頸がんワクチンが、新たに薬害裁判の歴史に加わることとなった。

 2016年7月27日、子宮頸がんワクチンの接種を受けた15歳から22歳の63人の女性たちが、国と製薬会社を相手に訴訟を提起した。

 問題となっている子宮頸がんワクチンは正式にはHPV(ヒトパピロマウィルス)ワクチンと呼ばれるもので、これまで10代の女性を中心に340万人がワクチンの接種を受けている。

 子宮頸がんは、厚生労働省のホームページによると、今、若い女性の間で増えていて、一年間で新たに約1万人が発症し、毎年約3000人が亡くなっているという。性交渉によって感染し、すでに感染している人には効果がないとされるため、性交渉を経験する前の10代の少女たちへの接種が、2010年頃から、公費の助成などによって積極的に実施されてきた。

 ところが、ワクチンの接種を受けた少女たちの中から、副反応と思われる症状を訴える人が出始めた。多くが手足や身体に痛みを訴え、失神、歩行障害、記憶障害などで学校に行けなくなったり、車椅子での生活を強いられるようになった。進学を断念した人たちも多い。

 ワクチンと副反応の因果関係については、正確なことはわかっていないことから、これが「薬害」だと決まったわけではない。しかし、自身が薬害エイズの被害者で、現在、薬害被害者団体の代表を務める花井十伍氏は、HPVワクチンをめぐるここまでの経緯は、日本が過去に経験してきたさまざまな薬害の構造と酷似している点を強調する。被害者が薬害を訴え出ても、科学的に証明されていないという理由から国にも製薬会社にも相手にされず、やむなく訴訟となり、随分と時間が経ってから、ようやく被害者たちが救済されるという、一連の薬害の構造のことだ。

 8月24日に行われた薬害根絶デーでは、厚生労働省の正面玄関脇にある「薬害根絶 誓いの碑」の前で、花井氏から塩崎厚生労働大臣に、薬害根絶についての要望書が手渡されたが、その中には今月、新たに薬被連(全国薬害被害者団体連絡協議会)に加わったHPVワクチン薬害訴訟全国原告団の名前も含まれていた。

 当初、薬被連はHPVワクチンの副反応被害の実態把握や被害者救済を政府に対して訴えることで、裁判に訴えることなく問題が解決されることを望んでいた。 薬害の被害者としての役割を担うことの重荷を自ら厭というほど経験してきた、花井氏を始めとする薬害の被害者たちには、10代の少女たちを裁判の当事者にはしたくないとの強い思いがあったからだと、花井氏は言う。

 副反応の被害が伝えられるなか、HPVワクチンの定期接種は2013年6月、「積極的接種勧奨」が一時的に中止になった。しかし、原因の究明も、被害者たちの救済も一向に進まなかった。医療機関からは副反応のはずがないと言われたり、「詐病」と言われてバッシングを受け、治療の対象として扱ってもらえない場合も多いことから、この度、裁判に踏み切らざるを得ないと判断するに至ったという。

 しかし、HPVワクチン被害は過去の薬害と酷似している面が多い一方で、その多くと異なる点がある。それは薬害の対象が、病気を直すためのいわゆる「薬」ではなく、病気を防ぐための「ワクチン」だったことだ。

 薬には、常に副作用のリスクが伴う。その薬に「有用性」があるかどうかは、薬の「有効性」と副作用の「危険性」のバランスで考えるべきものだ。既にある疾病を治療するためであれば、副作用もある程度は受け入れなければならない場合もあるだろう。

 しかし、予防接種は健康な人に接種するものであり、元々は伝染病などの蔓延を防ぐという社会防衛的な目的のために行われる。接種を受けさせることに社会としての有用性があることを前提に、稀に起こる副反応被害は社会で救済するというのが、予防接種の原則だった。しかし、HPVワクチンは個人防衛的な意味合いが強く、そもそも定期接種する必要があったのかについては疑問がある。

 HPVワクチンはグラクソ・スミスクラインとMSDの2社が製造販売する。いずれも世界的な製薬会社、いわゆるビッグファーマだ。このワクチンは今も全世界で使われており、WHO(世界保健機構)も使用を勧めている。副反応と言われる症状には、科学的根拠がないと指摘する医療関係者もいる。確かにまだ、究明されていない点は多い。しかし、副反応を訴え、実際に苦しむ少女たちが大勢いることもまちがいない。既に罹患した病気を治すための薬ではなく、将来、発症するかもしれない病気を予防するために行われる予防接種こそ、「危険性」が証明される前に「予防原則」が適用されるべきではないかと、花井氏は訴える。

 日本ではなぜ薬害が繰り返されてきたのか。その歴史の中で、今回のHPVワクチン問題は、どのような位置づけになるのか。薬害根絶のために何を考えなくてはならないのか。子宮頸がんワクチンの副反応被害に対する訴訟が起こされた今、薬害エイズの当事者で薬害の歴史や薬事行政に詳しいゲストの花井十伍氏とともに、ジャーナリストの迫田朋子と社会学者の宮台真司が議論した。

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