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2013年03月23日公開

TPP対米交渉に死角はないか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第623回)

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

杏林大学総合政策学部教授

1949年東京都生まれ。73年慶應義塾大学経済学部卒業、79年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。84年杏林大学社会科学部助教授、92年より現職。国際貿易投資研究所客員研究員を兼務。共著に『TPPと日本の決断』、『日本のTPP戦略:課題と展望』など。

概要

 安倍首相が3月15日、TPP交渉への参加を表明し、いよいよ日本は原則として「例外なき関税の撤廃」を条件とする多国間経済協定の締結に向けた本格的な交渉に突入する。安倍首相は日米首脳会談で「聖域無き関税撤廃が前提ではないことが確認できた」というが、それはあくまでそれが交渉参加の条件ではないことが確認されたに過ぎない。いざ蓋を開けてみたらどんな合意内容になるのか、また、どの程度例外が認められるような状況なのかは、今のところまったく未知数だ。

 TPP交渉は交渉への参加が認められた国のみが内容を知ることができる秘密会合であることから、まだ参加が正式に認められたわけではない日本には、実際の協議の中身がどうなっているかは正確にはわからない。そのために参加をめぐり国論を二分する事態にもなっているが、ここまでリークされた情報などから、やはりアメリカが交渉の中心にいることは間違いなさそうだ。そうなると、結局は対米交渉の成否が、日本にとってTPP参加の影響を決定的に左右することになると見ていいだろう。

 TPPは、もともと「P4」と呼ばれるブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランドの4カ国で2006年にスタートした多国間自由貿易協定だったが、2009年のアメリカの交渉参加を機に太平洋地域全体を巻き込む大きな貿易圏の形成へと向かい始めた。通商交渉に詳しいゲストの馬田啓一氏は「アメリカはTPPを入り口にアジア太平洋地域全体を包含する自由貿易圏の形成」を目指していて、究極的にはその枠組みに中国を引き込むことにアメリカの真意があることは明らかだと指摘する。つまり、TPP交渉でアメリカがどこまで例外を認めるかは、後で中国が協定に参加することを想定した上で、譲れるものと譲れないものを判断した結果になるということだ。

 アメリカとの自由貿易交渉としては、1990年代のNAFTA(北米自由貿易協定)でカナダとメキシコが、また昨年発効した米韓FTAでは韓国が、一足先にアメリカとのFTAを経験している。その内容を見ると、例えば韓国では「主権を売り渡した」とまで酷評されているISDS条項(国家と投資家の間の紛争解決手続)でも、米企業が勝訴しているケースは非常に少ないと馬田氏は言う。また、米企業が勝訴するのとほぼ同じくらいの割合でカナダやメキシコ企業が勝訴しているケースもあり、「日本が提訴されるケースにばかり注目が集まるが、日本企業が海外進出する点を考えるとむしろ日本にとって必要な条項だ」と馬田氏は言う。

 確かにアメリカは交渉巧者で手強い相手であることはまちがいない。しかし馬田氏はTPPが多国間交渉であることから、アメリカとの二国間交渉の場合に比べて日本にも勝機はあると指摘する。大国のアメリカが無理難題を押しつけようとしてきたら、日本が他の11ヶ国と連携してアメリカに太刀打ちするような交渉術が必要になるということだ。また、アメリカのオバマ大統領はできれば年内中、遅くとも中間選挙の年となる来年の春までにはTPPの交渉をまとめなければならないという国内政治的な事情もある。そのあたりの「家庭の事情」を逆手にとり、日本が交渉のまとめ役を買って出ながら、巧みに自分たちの主張を合意案に滑り込ませていくようなしたたかな交渉が果たして日本にできるかどうかが問われることになると馬田氏は言う。

 TPP交渉参加に向けて動き出した日本に落とし穴はないのか。アメリカ、オーストラリアを含む11ヶ国の思惑が渦巻く交渉の場で、日本は国益を守ることができるのか。ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、NAFTA、米韓FTAなどの過去の対米FTA交渉をウオッチしてきた馬田啓一氏と議論した。

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