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2013年01月19日公開

水の話

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第614回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1967年群馬県生まれ。1990年学習院大学文学部卒業。日本実業出版社、ベストセラーズ勤務を経て、94年より現職。2009年より東京学芸大学客員准教授を兼務。著書に『67億人の水 争奪から持続可能へ』、『日本の「水」がなくなる日』など。

著書

概要

 今年は水についていろいろな側面から考えてみたい。
 第一回目となる今回は、世界と日本の水問題の入門編をお送りする。
 地球上には70億の人口を養うのに十分な水資源がある。にもかかわらず世界各地で渇水や水不足、それを原因とする飢餓や衛生状態の悪化といった問題は後を絶たない。水資源は、あるところにはあるが無いところには無いという著しい偏在の問題を抱えていて、これが国際的な紛争や水資源争奪の原因となっている。急速に近代化が進む中国では増加している水需要をまかなうために、国際河川の上流部に大規模ダムを造って水を自国に引き込もうと躍起になっているが、関係国との摩擦が生じている。シンガポールはマレーシアからパイプラインを引いて水を輸入する一方で、水ビジネスを手がける国策会社を立ち上げて水の安全保障に取り組んでいる。サウジアラビア系の民間企業がナイル川の上流域で大規模な水プラントを建設して水利権を確保したが、それに反対する地元住民と武力衝突にまで発展しているケースもある。
 翻って日本の水資源はどうか。「日本は温暖湿潤な気候で降水量も多く水資源に恵まれている」。ほとんどの人はそう考えているのではないか。しかし水資源問題に詳しいジャーナリストの橋本淳司氏は「日本は決して水資源に恵まれているわけではない」と話す。
 年間の降水量こそ世界の平均を上回るが、国民一人当たりの水資源でみると、世界平均の半分程度に過ぎない。日本は雨はそこそこ降るが、急峻な地形であるがゆえに、降った水を貯めておくことが難しい。そのため、輸入食料を生産するために使われた「バーチャルウォーター」も計算に入れると、実は日本は水の輸入国だという。よく日本の食糧自給率が問題になるが、仮に日本が食糧自給率を本気で上げようと思っても、実は現在の日本の食生活を支えるだけの水資源が日本にはない。現在の水資源量のままでは、食糧自給率は頑張っても60%が限界なのだと、橋本氏は言う。
 しかし、そうした事情をよそに水をめぐるビジネスは活発だ。飲料メーカーは良質な水源から原価ほぼゼロの地下水をくみ上げて流通させるのに忙しい。消費者も安全な水を求めて水道水を敬遠し、ガソリンよりも高価な水を買っていく。また日本には地下水を管理保全するための基本法がないのをいいことに、外資系企業と組んで日本の水を海外に売り込む動きもあるという。日本では一旦土地を所有すれば、その下を流れる地下水の採掘権も付いてくると考えられている。そのため行きすぎた水資源の開発や利用を規制する手立てがなく、水源地を抱える地方自治体が各々の事情に合わせて条例や要項などを策定して対応しているのが現実だ。
 また、日本では公共サービスとして考えられてきた水道事業を、近年は民間に委託する動きも出てきている。世界には水関連事業をトータルで手がけて年間1兆円超の莫大な売上をあげている、通称「ウォーターバロン(水男爵)」と呼ばれる巨大企業が存在しているが、料金値上げや水道利用の差し止めなどをめぐって利用者としばしば衝突しているという。そしてそのウォーターバロン傘下の企業がすでに日本でも水道事業を受託し始めている。行政官庁が合理化・効率化の動きを促している面もあるが、そもそも水道事業が民営化に馴染むのか不明だ。
 水は命の源泉である。生命の維持はもちろん、われわれが健康で衛生的な生活を送ることができるのも十分な水資源があってこそだ。しかし、われわれはこれまで水に対して十分な関心を払ってきただろうか。日本ではいつも目の前を水が流れているために、これまでわれわれは少々水という物に対して無頓着過ぎたのではないか。
 ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、水資源問題に詳しい橋本氏と議論した。

 

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