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2010年11月20日公開

内部情報流出の時代

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第501回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1969年東京都生まれ。92年中央大学法学部政治学科卒業。97年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科修士課程修了。シンクタンク(株)ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ、ヤクルト・ヨーロッパBV、東京財団リサーチフェローなどを経て、07年よりG4SJapan取締役。ユーラシア21研究所研究員を兼務。著書に『外注される戦争−民間軍事会社の正体』、『戦争詐欺師』など。

著書

概要

 軍の機密であろうが警察の捜査情報であろうが、何でもネット上に流出するのが当たり前の時代が到来したのだろうか。
 海上保安官による尖閣ビデオ流出騒動が話題を呼んでいるが、その陰で深刻な政府情報の流出事件が国内外で相次いで発生している。
 日本の警視庁公安部外事三課のものと見られるテロ対策捜査の内部資料と、膨大な量のアフガニスタン戦争やイラク戦争に関する米軍の内部資料の流出事件だ。いずれも何らかの形で内部情報が持ち出され、日本の警察情報はウィニーのネットワーク上で、米軍情報は内部告発専門のウェブサイト『ウィキリークス』を通じて、インターネット上で公開された。
 流出した警視庁のテロ捜査資料の中には、警視庁が監視対象にしているイスラム系外国人の顔写真を含む個人情報や監視下に置いているモスクの名前、警視庁国際テロリズム緊急展開班の班員の顔写真入りプロフィールなど、約600人の個人情報やイスラム圏大使館の銀行口座の入出金解析、洞爺湖サミットの警備体制に関する資料など重要な捜査資料が多数含まれており、流出したファイルの総数は114点にのぼるという。
 この中には警察の幹部クラスでなければアクセスできない情報が多く含まれていることから、内部の犯行の可能性が高いと言われている。しかし、これらのファイルは暗号化され、ネットワークから遮断された警察内部のPCでしか閲覧できないようになっていることから、外部からのサイバーアタックや海保ビデオのように内部の者がUSBなどのメディアにデータをコピーして持ち出すことは考えにくいとも言われる。
 流出した資料について、今のところ警察はそれが本物であるかどうかは認めていないが、岡崎トミ子国家公安委員長が記者会見でうっかり「遺憾」を表明するなど、これが本物である可能性はまちがいなさそうだ。
 インテリジェンスを研究する国際政治アナリストの菅原出氏は、今回の情報流出で日本の公安警察が対テロ対策として誰を対象にどんな捜査を行っているかを露呈してしまったと、情報流出の重大さを語る。また、今回捜査協力者の個人情報までもが流出してしまったことで、今後、日本の警察が捜査への協力を得ることがより困難になることも懸念されると言う。
 しかし、菅原氏は同時に、この流出によって日本の警察の対テロ捜査のお粗末さが、露わになった点を重視する。菅原氏は日本の警察が、大きなムスリム人口を抱える欧米の対テロ捜査の手法をそのまま真似て、単なる不良外国人を監視しているだけで、有効なテロ対策を取れていない可能性があることが、今回の資料から明らかになったと語る。資料を流出させた人間が、そうした問題を明らかにする動機があった可能性も排除できない。
 一方、『ウィキリークス』に掲載された米軍の大量の内部資料を分析した菅原氏は、その中にアフガニスタンやイラクの米軍兵士が、日々の活動を綴った活動報告書が含まれている点に着目する。そうした資料からは秘密のベールに包まれている戦争の現場の様子が手に取るようにわかる。また、ウィキリークスは、米軍ヘリからの誤射によって、ロイター通信のカメラマンが射殺される瞬間の映像も公開しているが、これも明らかに内部から持ち出されたものだ。
 ウィキリークスに情報を漏洩した軍の兵士は、既に逮捕されている。当初、義憤に駆られた内部者が正当性のない戦争を告発するためにやったと受け止められていたが、実はウィキリークス側によって操られていた可能性があることが指摘されるなど、告発者と告発サイトのどちらに主導権があったかについては情報が錯綜していると菅原氏は言う。
 いずれにしても、アメリカには、古くから不正などを内部告発する人の受け皿になる団体があり、そうしたウェブサイトも少なからず存在するが、ウィキリークスの特徴は宣伝活動が非常にうまいため、パブリシティによって巨額の寄付を集めて大きくなっている面があると菅原氏は説明する。つまり、義憤に駆られた内部者が、正義のために身の危険を顧みずに内部告発を行っているという内部告発本来の側面と、それを奨励し、機密情報を持ち出すノウハウまで提供したり、それを促したりそそのかしたりすることによって、さらに大きなパブリシティを得ていくような、ある種の内部告発ビジネスが成立している面もあるようだ。
 とは言え、国際政治の世界ではすでにウィキリークスはリスクとして認知される存在となっていると菅原氏は言う。今後、仮にウィキリークスが消えたとしても、内部告発を行う組織や情報流出は後を絶たないと思われるため、こうした内部情報の告発サイトが、今や国際政治上の重要なプレイヤーとしての地位を得る時代になっているようだ。
 正義のための内部告発にせよ、ウイルスや外部からのサイバー攻撃による流出にせよ、情報流出の要因は様々だが、どれだけ堅牢なセキュリティ対策を施しても、確信犯的な内部告発者がいれば、必ず情報は流出するし、それはインターネットを通じて一気に世界中に拡散する。一連の内部情報流出から何が見えてくるのか、菅原氏と議論した。

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