電力供給の8割を再エネで賄うことは可能だ
自然エネルギー財団シニアマネージャー
1947年群馬県生まれ。72年日本大学理工学部卒業。72年ベルコ・レーシング入社。77年同社を退社し、フリーのエンジニアとしてレーシングカーの設計等に携わる。94年日本EVクラブを設立し代表に就任。80年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『3年後に生き残るクルマ』、『エコカー激突!』など。
電気自動車(EV)時代の本格到来か。
ここにきてEVが次々と一般ユーザー向け市場に投入され始めている。今年3月に三菱自動車が、量産車としては世界初となるEV『i-MIEV』の一般ユーザー向けの販売を開始し、今年末には日産も『リーフ』の販売を始めるそうだ。2012年にはホンダもEVを発売する計画を明らかにしている。エコカーとしてはやっとハイブリッドカーが普及し、次は充電可能なプラグインハイブリッド車の時代かと思いきや、時代はそれを通り越して、一気に本格的EV時代に突入しそうな気配がする。
18年前からEVの開発を手掛けてきた自動車評論家の舘内端氏は、欧州や米カリフォルニア州の排出ガス規制の強化や、EVの性能を左右する充電池の高性能化や低価格化によって、確かにEVがここにきて一気に普及する前提が整ってきていることは確かだと言う。
実際にカリフォルニア州では2012年からZEV(zero emission vehicle=ゼロエミッション車)規制によって一定台数の無公害車(EVまたは燃料電池車)を販売する義務が自動車メーカーに対して課される。また、欧州でも、2012年にはリッターあたり19.4kmに満たない燃費の車を製造したメーカーに対して罰金が課せられるようになるという。そうした中で、走行段階では全く温室効果ガスを排出しないEVの存在価値が、これまでになく高まっていることは紛れもない事実だろう。
また、走行距離が短い、充電に時間がかかる、充電施設が少ないといったEVにまつわる様々な問題点も、技術的にはほとんど実用可能なレベルまで解決されてきた。特に家庭用電源でも充電が可能になったことで、多くのハードルはクリアされた感がある。
しかし、それでも舘内氏は、「モノ(EV)は来たが精神がまだついてきていない」と、昨今のEVブームに注文をつける。それは、EVが決して無公害車ではないからだ。
確かにEVは走行段階ではCO2を排出しないゼロ・エミッション車だが、その動力源となる電気を発電するためには火力発電所で大量のCO2が排出され、原子力発電所で放射性廃棄物を発生させている。EVも決して無公害車とは言えないのだ。
舘内氏は、真のEV時代が到来するためには、単にEVが現在の自動車にとって替わるのではなく、これまでのような人や物の長距離の移動を前提とする20世紀型のライフスタイル自体が、変わる必要があると言う。走行距離や充電施設の普及が問題になっているうちは、本当の意味でのEV時代など到来しないというのが、日本でいち早くEVの開発に関わってきた舘内氏の主張だ。
実際にEVに試乗してその実用性を検証するとともに、昨今のEVブームがどれほど本物なのかを、EVの権威である舘内氏と神保哲生、武田徹が議論した。