国葬と旧統一教会問題に揺れる永田町に今起きていること
政治ジャーナリスト
1972年東京都生まれ。96年国際基督教大学教養学部卒業。97年NHK入局。『クローズアップ現代』などを経て04年退職。同年NPO法人ライフリンクを立ち上げ代表に就任。09年11月から10年6月まで内閣府参与を務める。共著に『「自殺社会」から「生き心地の良い社会へ」』、『闇の中に光を見出す—貧困・自殺の現場から』。
1961年神奈川県生まれ。85年日本大学法学部卒業。東京タイムズ、週刊ポスト、SAPIO、テレビ朝日報道局勤務などを経て、93年よりフリー
1960年富山県生まれ。84年一橋大学社会学部卒業、同年日商岩井(現双日)に入社。91年米国ブルッキングス研究所客員研究員、93年経済同友会調査役などを経て、03年より現職。著書に『1985年』、『溜池通信 いかにもこれが経済』など。
参議院選挙が明日投票日を迎える。
民主党政権の9ヶ月への審判、財政再建と消費税率引き上げの是非等々、この選挙が問うものは多いが、その中でも各党が、経済成長に力点を置いている点が目に付く。貧富の格差問題やワーキングプア問題、年間3万人を越える自殺者問題など、日本が抱える深刻な問題の数々も、経済成長さえ達成できれば自ずと解決されると言わんばかりだ。
しかし、自殺の防止や家族を自殺で失った遺族のサポートなどを現場の第一線で行ってきたNPOライフリンクの清水康之氏は、毎年3万人の自殺者を出すこの国でまず問われるべき問題は成長戦略ではないはずだと、各党の主張に疑問を呈する。
もとより、経済成長そのものが悪いわけではない。しかし、清水氏の目には各党の成長戦略が、「経済成長のない時代に入り、せっかく日本が抱える本当の問題が見えてきたのに、それをまた経済成長によって覆い隠そうとしているだけ」と映る。つまり、今日本が抱える問題の多くは、戦後、日本が経済成長を最優先するあまり、置き去りにしてきたさまざまな問題が、経済がなくなった今になって初めて噴出しているのではないかと言うのだ。それは、地域や社会とのあり方であり、人とのつながり方であり、家族との関係であり、そして一人ひとりの人間としての生き方でもあるかもしれない。経済成長による解決では、「また経済成長が無くなったら自殺者が3万人に戻ることになる」と清水氏は言う。
むしろ、清水氏が考える日本の最大の問題は、われわれの多くが、何か問題があるとわかっていても、それをそのまま放置し、その問題が解決されないまま続いていくことではないかと言う。問題を問題として認識し、それを直視し、対応する。そういう基本的なことができていないことが、多くの問題の根底にあるというのが、自殺対策という人間の生死の根源に関わる現場で奔走してきた清水氏の実感だと言う。
参議院選挙について清水氏は、06年に自殺対策基本法が成立した背景に、参議院の超党派の議員たちの尽力があったことを例にあげ、「参院の比例区には、必ずしも世の中の多くの人の耳目を引くわけではない問題に地道に取り組んでいる議員が多い。そうした議員を一人でも多く当選させて欲しい」と言う。熾烈な小選挙区制の元で選挙が頻繁に行われる衆院と比べ、参院は任期が6年と長く、しかも比例区では衆院のような人気投票に荷担しなくても、一定数の議員が当選する道が残されている。実はそうした議員の地道な活動が重要だと言うのだ。
パート1では津田塾大学准教授の萱野稔人と神保哲生が、清水氏と参院選の真の争点について議論した。
また、パート2では、政治ジャーナリストの角谷浩一氏と双日総研主任エコノミストの吉崎達彦氏をスタジオに招き、政治ジャーナリストとエコノミストの目で見た参院選の争点を聞いた。
そして、パート3では、パート1とパート2の議論を宮台真司と神保哲生が総括した。