民主党は本当に生まれ変わったのか
立憲民主党代表
1964年栃木県生まれ。87年東北大学法学部卒業。91年弁護士登録。93年衆院初当選(日本新党・旧埼玉5区)。94年新党さきがけ入党、96年民主党結党に参画。党政調会長、党幹事長代理、党憲法調査会長、衆院決算行政監視委員長などを歴任。当選6回(埼玉5区)。
公開の場で政府のムダ遣いを洗い出す「事業仕分け」が、11月27日終了した。インターネット中継へのアクセス数は270万回に達し、直接会場へ足を運ぶ傍聴人の数も1万人弱にのぼるなど、国民の関心も予想以上に高かったようだ。
事業仕分けによって、これまで財務省主計局の密室の中で行われていた税金の使い道の査定が、白日の下にさらされたことの意味は大きい。
しかし、その一方で、すべての事業の有用性を1時間あまりの議論で断定する手法に対しては、少なからず反発もあった。
また、今回の事業仕分けが来年度予算の概算要求から選定された事業が評価の対象となったこともあり、仕分けでいくら削れるかという金額の部分にメディアの関心が過度に集まったことも否定できない。
しかし、今回、統括役として事業仕分け作業を差配した枝野幸男衆議院議員は、事業仕分けの唯一の目的は、その事業に対して納税者の立場で納得できる説明がなされるかどうかを判断することであり、当初から金額を削減することが目標ではなかったと言い切る。事業仕分けで事業の妥当性を判断した結果、結果的に削減額が1兆6千億円(朝日新聞)になったに過ぎないのであって、金額の多寡自体にはそれほど意味はないというのだ。
むしろ、枝野氏は、今回の事業仕分けの最大の収穫は、日本では予算編成においてこれまで「目的の重要性」しか議論されてこなかったことが、はっきりとしたことだと言う。事業内容を説明に来た省庁の担当者は、その事業の目的がいかに重要で意味のあることかについてはさまざまな方法で説明しようとするが、ほとんどのケースで、その説明は目的の正当化に終始し、その目的を達成する手段の正当性や合理性をきちんと説明できる人が、いなかったというのだ。
事業仕分けでは、質問にうまく答えられない役人のプレゼンテーション能力の低さも指摘されたが、枝野氏は、問題はプレゼンテーション能力ではなく、そもそも予算を要求する省庁側は目的の重要性しか考えていないため、手段の合理性を問われても、考えたことがないことに答えようがなかったところにその原因があると指摘する。
目的の重要性にしか目が行かなかったのは、要求省庁の役人に限ったことではない。概算要求を査定する財務省主計局、政治家、メディア、そして枝野氏自身も含めて、これまで予算の使い道に対して目的の重要性と手段の合理性を区別して考えるという発想が欠けていたために、野放図な予算編成を許してきたと枝野氏は語る。
事業仕分けは、それを議論するプロセスを通じて、手段の正当性や合理性に対する問題意識を誰もが共有できるようになるところに、その本質的な意義があると枝野氏は言う。
その意味で、今回の事業仕分けが一般に広く公開されたことの意味は大きい。これまで主計局という密室で行われてきた不透明な予算査定を公開の場に引っ張り出し、予算の有効性について議論する場に国民を引き込んでいくことで、初めて事業仕分けはその真価を発揮するというのだ。
事業仕分けは、民主党が掲げる「市民参加型政治」への第一歩となるか。枝野氏とともに考えた。