石破元幹事長が総裁選への出馬を明言
衆院議員
1945年生まれ。72年東京大学法学部卒業。82年弁護士登録、85年税理士登録。83年衆院初当選。財務大臣、国交大臣、党政調会長などを経て、09年より現職。当選10回(京都5区)。
1953年兵庫県生まれ。76年神戸大学法学部卒業。85年神戸大学大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。姫路獨協大学専任講師、同大学助教授、教授を経て、01年より現職。政治学博士。著書に『大平正芳 「戦後保守」とは何か』、共著に『戦後日本の宰相たち』など。
この9月、自民党の第24代総裁に選出された谷垣禎一衆議院議員は、自民党を保守政党として再生させたいと抱負を述べる。しかし、谷垣氏が掲げる「保守政党」とはどのようなものなのか。それを探るべく、マル激は谷垣氏を自民党本部に訪ねた。また、後半は日本の戦後の保守政治を研究している政治学者の福永文夫氏を招き、谷垣総裁が掲げる自民党の保守政党としての再生の課題を議論した。
先の総選挙での歴史的な大敗により、16年ぶりに総理大臣ではない自民党総裁となった谷垣氏は、55年体制における自民党が果たしてきた役割は主に3つあると語る。一つは憲法9条と日米安保による平和の構築、二つ目は戦後復興と経済成長による国家の繁栄、そしてもう一つが自由体制の維持だ。
歴代の自民党政権が、日本を自由主義陣営の一員として経済成長を図ることで、歴史上かつて見ないような経済成長を成し遂げてきたことは、紛れもない事実だろう。また、経済成長の果実を、公共事業などを通じて地方に再配分することで国民生活を豊かにすることに成功し、それを地盤に一貫して政権与党の座に就いてきたのが自民党だった。
しかし、冷戦も高度成長も過去のものとなり、再配分をしようにも、財政は火の車である。自民党政治の必要条件が総崩れとなる中で、2009年自民党は遂に半世紀に及ぶ政権与党としての地位を民主党に明け渡すこととなった。
谷垣氏は、党の再生のためには、自民党の原点とも呼ぶべき3つの基本路線を再確認した上で、それに加えて「保守政党としての」新たな原則を打ち立てることが必要だと主張する。
まず、谷垣氏は、再配分政策に舵を切ったかに見える民主党に対して、保守政党としての自民党は「公助の前に自助・共助を重視」し、個人の自立や自由をより重んじる路線をとる意向を明らかにする。また、自分の国に対する大らかな自信と先人の知恵を尊重する態度を重視するのも、保守としての責務になると、谷垣氏は言う。
更に、「小さな政府」だけでは、地方の疲弊や格差を手当できないとして、小泉構造改革とは一線を画する姿勢を打ち出す。
果たして自民党は、谷垣氏の考える「保守」の旗の下に、民主党に対抗しうる勢力を糾合することができるのだろうか。
戦後保守を研究してきた政治学者の福永文夫獨協大学法学部教授は、谷垣氏が考える「保守」は、谷垣氏の出自でもある宏池会の伝統的な流れを汲むものだが、果たしてそれで民主党に対する対抗軸に成り得るかどうかについては疑問を呈する。
福永氏は民主党も再配分的な政策を多く持ちながら、鳩山代表、小沢幹事長、岡田外相と、いずれも自民党の旧経世会OBがその中枢を占めているのが実情で、その本質においては保守政党としての性格を強く持つという。そのため、伝統的な宏池会路線だけでは、民主党との差別化は難しいだろうと言う。
福永氏は、歴史上保守勢力とは、何ものかに対する対抗勢力であることが前提となるため、まずは民主党の再配分の行き過ぎをチェックするなどして、同じ保守路線の政党でも、再配分のあり方や国権の及ぶ範囲など「度合いの違い」で差異を打ち出していくしかないだろうと言う。
番組前半で谷垣氏と自民党再生のシナリオを、後半は谷垣氏との議論を引き取る形で、保守政党としての自民党再生の可能性について福永氏と議論した。