政治権力に屈し自身のジャニーズ問題とも向き合えないNHKに公共メディアを担う資格があるか
ジャーナリスト、元NHKチーフ・プロデューサー
2008年を締めくくるマル激は、東京・新宿のライブハウス『ロフト・プラスワン』で公開収録を行った。昨年に引き続きなぜか男性客が圧倒的に多いのが気になるところだが、満員の熱気の中、神保・宮台が今年一年を振り返った。
今年6月の秋葉原通り魔殺人事件では東浩紀氏とともに事件の背景でも突っ込んだ議論が交わされたが、メディア関連では、事件現場に居合わせた通行人が撮影した写真やビデオがインターネット上のみならず、マスメディア上にも大量に氾濫した現象をめぐり、議論した。
アメリカ史上初の黒人大統領を生んだアメリカ大統領選挙では、インターネットを選挙戦の主要なツールとして活用したオバマ氏が、資金面でも他候補を圧倒したことで、インターネットの影響力がマスメディアのそれを上回った史上最初の選挙としての意味を考えた。
2008年はインターネットの影響力が確実に大きくなる一方で、マスメディアの劣化が目に見えて進んだ一年でもあった。朝日新聞など各紙が「10月26日選挙」と一面トップで報じながら結局選挙は行われなかった「解散騒動」も、マスメディアの凋落ぶりを示す一つの事例となった。2008年はまた、金融危機に端を発する景気の急激な悪化で、テレビ局や新聞社などマスメディアの経営の地盤が、根底から揺らいだ一年でもあった。
しかし、既存メディアの劣化が急激に進む中、それに取って代わろうとする新たなメディアがなかなか登場してこない問題も、依然として続いている。再販、記者クラブなど既存メディアの既得権益が大きすぎるため、他のメディアが育つような環境が整備されないことが主たる原因だが、この日のマル激では、そのような状況でわれわれはどのメディアとどのように付き合い、またどの情報源を頼りにすべきかなども議論した。
メディアを切り口にした2008年の総括は3時間にも及んだ。