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2008年11月08日公開

[米大統領選挙スペシャル]オバマのアメリカを展望する

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第397回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

東京大学大学院総合文化研究科教授
その他の放送 (1件)

1947年東京都生まれ。75年東京大学大学院法学政治学研究科中退、77年プリンストン大学大学院歴史学部修士修了、89年同歴史学博士。89年北海道大学大学院教授などを経て、07年より現職。著書に、『アメリカニズム』、『アメリカ 過去と現在の間』、共編著に『権力と暴力』など。

著書

みずほ総合研究所専務執行役員・チーフエコノミスト
その他の放送 (1件)

1954年新潟県生まれ。77年早稲田大学政治経済学部卒業。同年、富士銀行入行。88年富士総合研究所研究開発部、92年ニューヨーク事務所所長、02年みずほ総合研究所チーフエコノミストなどを経て、07年より現職。著書に、『アメリカ経済は沈まない』、共著に『アメリカ経済』など。

著書

概要

 オバマのアメリカが誕生する。4日行われた米大統領選挙で、民主党のバラク・オバマ上院議員が、同じく上院議員で共和党のジョン・マケイン候補に圧勝した。アフリカ系アメリカ人初の大統領となるオバマ氏は「たどり着くのに時間はかかったが、今、この選挙で、この瞬間に、アメリカに変革が訪れた」と勝利演説で述べ、多くの人の胸を打った。
 今回のマル激は、米大統領選挙スペシャルとして、オバマを選んだアメリカが今何を求め、どこに向かおうとしているかを、2人のアメリカウォッチャーと議論した。
 ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデルはオバマの勝利について、「アメリカはブッシュのCOMMON GOOD(共通善)を否定した」と指摘し、ブッシュのアメリカを、「COMMON GOODの希求に政府は関与せず、個々人が自らの利益を最大化することに集中」するものだったと総括した。そして、その否定の上に選ばれたオバマ政権の課題は、政府に何ができるかを示すことになるが、個々の帰属集団の要求を寄せ集め、そこにばらまきを行う旧来のニューディール連合的なCOMMON GOODに戻ることも、もはや許されないとして、「個々人が公的貢献を行う見返り」に政府が富の再配分を行う新たなアメリカのCOMMON GOODの基準を作ることになるだろうと予見した。ここでいう公的貢献とは、兵役や地域でのボランティア、コミュニティサービスを指す。
 確かにオバマ氏は、人種、性別、所得分布から見ても、幅広い層からの支持を集めて、圧倒的な勝利を収めた。過去2回の選挙でレッドステート(共和党支持州)とブルーステート(民主党支持州)に真っ二つに分断されてきたアメリカの政治地図が、オバマ氏支持の一点で、12年ぶりに塗り替えられた格好だ。
 オバマ氏を支持した人の多くは、政府はできる限り何もしない方がいいとの立場を貫いてきたブッシュ政権に背を向け、政府が現在の窮状を救ってくれることを期待した。しかし、彼らの要求をすべて満たすだけの国力は、もはやアメリカには残っていないし、グローバル化した時代状況もそれを許さない。
 とすると、オバマ政権が発足しても、すぐに自分たちに見返りが無いことがわかると、早晩支持者たちの離反を招く危険性は常に付きまとう。しかし、その一方で、今回オバマ氏を支持した人たちの中には、単なる短期的な見返りを期待して一票を投じたわけではない人々が大勢いる。それは、ミレニアルズと呼ばれる若年層であり、東部のインテリ階層でもある。
 そうした状況の中で、オバマ政権はアメリカに対して、そして世界に対して、どのようなCOMMON GOODを提示できるのか。
 番組前半は選挙結果とオバマ氏の勝利演説を通じて、オバマ政権の課題を占った。マイノリティからの圧倒的な支持に加え、オバマ氏が白人票の43%を得た(CNNの全国出口調査)ことは、明らかに若い世代で人種の垣根が下がっていることを示す。しかし、それと同時にオバマ氏も、従来の黒人政治家とは異なり、黒人独特のルサンチマンや抗議を行わない新しいタイプの政治家だ。初の黒人大統領として、これまで人種面で分断されてきたアメリカが、オバマ氏の大統領就任でどう融合されていくのかに注目したい。
 またブッシュ政権下で実施された新自由主義的な政権運営は、アメリカに大きな格差をもたらした。一部の成功者が巨万の富を得る一方で、所得の減少は白人にまで広がり、格差は耐えられないまでに拡大した。オバマ政権にとってある程度の再配分政策への回帰は不可避だと思われるが、同時にアメリカを震源地とするグローバル化の波は、もはやとどまるところを知らない勢いで世界を席巻している。言いだしっぺのアメリカだけが、資本の再配分や保護主義に戻ることが許される状況ではない。そこでもまた、オバマ政権は困難な選択に直面するだろう。
 金融問題についても同じことが言える。危機を招いた金融の過度の自由化に対しては、一定の規制強化が必要だろうが、ここまで自由に世界を飛び回るようになったマネーの流れを、果たして本当に規制できるのか。また、それを規制することで、世界経済にどのような影響を及ぼすのか。
 その一方で、現在の金融危機を乗り切るために、アメリカは膨大な公的資金の投入を余儀なくされている。一説には来年度の財政赤字は1兆ドル(100兆円)を超えると言われる。オバマ政権は金融危機と莫大な財政赤字という負の遺産をブッシュ政権から引き継いでの船出となる。今後も、危機の回避と景気回復のためにアメリカ政府は惜しみなく財政出動を続ける他に実際のところ選択肢はなさそうだが、そうすることで財政赤字はさらに膨れ上がる。早晩、米ドルの基軸通貨としての地位の維持は困難になるだろう。もしかすると、アメリカの国際的な地位の低下をアメリカ人に納得させることが、オバマ政権の最も重大な仕事の一つとなる可能性が大きいのだ。
オバマのアメリカを展望しながら、そこから日本が学ぶべきことは無いのかを議論した。
(今週は特別番組のため、ニュース・コメンタリーはお休みします。)

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