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2008年05月17日公開

日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第372回)

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ゲスト

1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部卒業。同年神戸製鋼所入社。電力中央研究所勤務を経て96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得退学。2000年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、現職。著書に『北欧のエネルギーデモクラシー』、共著に『コミュニティパワー エネルギーで地域を豊かにする』など。

著書

概要

 7月の洞爺湖サミットを前に、来月発表される「福田ビジョン」では、2050年までに温室効果ガスの60~80%の削減という思い切った目標を日本として打ち出すことが報じられている。しかし、その実現可能性については大いに疑問が残る。なぜならば、エネルギー政策の抜本的な転換を抜きに、80%ものCO2を削減することは難しいと考えられているにもかかわらず、日本は世界の先進国の中でも、エネルギー政策の転換が大きく遅れを取り始めているからだ。
 現在、欧米では温室効果ガス削減の根本的な解決策として、再生可能エネルギーが注目され、各国ともその開発や普及に本格的に力を入れ始めている。中でもドイツの伸びが突出しており、2030年までにエネルギーの45%を再生可能エネルギーで賄う目標をたてているほどだ。地球温暖化問題には後ろ向きと批判されることの多い米国でさえ、2020年に15%という目標をたてているが、日本は2014年までに使用電力の何と1.63%を再生可能エネルギーで賄うことを義務化しているに過ぎない。明らかに桁が違うのだ。
 「世界から見れば、日本の数値目標はジョークにしか思えない」と再生可能エネルギーの普及に尽力してきた環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は苦笑し、世界の趨勢から取り残されつつある日本の状況を嘆く。
再生可能エネルギーとは、風力、太陽光、太陽熱、地熱、バイオマス、水力、波力など、何度も資源が再生するエネルギーのことを指す。石油や石炭などのように枯渇することもなく、地域的に偏在がないため、地政学上のリスクがない。化石由来燃料とは違い、温室効果ガスがほとんど出ないため、温暖化防止対策としても最も好ましいエネルギー源なのだ。
 日本のようにエネルギー資源をほぼ100%輸入に頼らざるを得ない資源小国にとって、再生可能エネルギーは21世紀の夢のエネルギー源と言っていいだろう。
 しかし、その日本が、既存の化石燃料や問題の多い原子力から再生可能エネルギーへの転換が図れずに、世界の趨勢から取り残されつつある。再生可能エネルギーの中で最も普及している風力発電で日本は、ここ数年の間に中国やインドにも抜かれて、現在、世界13位にまで落ちている。2004年まで発電量では世界一を誇っていた太陽光発電でも、累積導入量を2005年にドイツに抜かれて以来、差は開く一方だ。
 90年代にスウェーデンやデンマーク、ドイツが再生可能エネルギーを政策的に優遇することで普及を一気に増やしたのを横目に、日本はもっぱら原子力偏重のエネルギー政策を進め、再生可能エネルギーを軽視してきた。軽視どころか、むしろ次々と補助金を打ち切るなどして、市場を縮小させるような政策をとってきたのが実情だ。
飯田氏は、ドイツやスペインの成功例から、再生可能エネルギーを普及させるために何が必要かは十分わかっており、あとはそれを実行する政治的な意思があるかどうかだけが問われていると指摘する。しかし、新しいエネルギーの台頭は、既存のエネルギー産業、とりわけ電力会社の権益と真っ向から衝突するため、経済産業省も政治も、電力会社の政治力の前で、わかりきった施策を実行に移すことができないでいると言うのだ。
 再生可能エネルギー普及の遅れは、他の面にも悪影響を及ぼし始めている。かつて、世界の太陽光発電機器のシェアではシャープを筆頭に日本企業が上位を独占してきたが、ここにきてシャープはついにドイツのメーカーQセルにトップの地位を奪われてしまった。現在世界3位にある中国の太陽光発電専門メーカーのサンテックは、ナスダックに上場し、猛烈な勢いでそのシェアを伸ばしている。
 ドイツは、再生可能エネルギー関連産業を「21世紀の自動車産業」とまで位置づけ支援し、17万人の雇用創出をし、2兆5000億円の経済効果を発生させている。産業政策的にも、再生可能エネルギーの可能性に目をつぶり続けることはできない状況となっているが、この期に及んでも、日本は舵を取ろうとしないのはなぜか。
 今週は、イラク戦争、原油高と、これほどまでに化石燃料依存のリスクが顕在化し、欧米諸国や中国インドなどの新興国まで再生可能エネルギーを一気に伸ばす中、本来であれば真っ先にそれを推進していなければならないはずの資源小国日本は、なぜいまだに二の足を踏み続けているのか、またその結果がどのようなリスクを生んでいるのかなどを、日々この問題と格闘している飯田氏とともに考えた。

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