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2008年05月10日公開

著作権は誰のためにあるのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第371回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

1965年熊本県生まれ。91年東京大学法学部卒業。93年弁護士登録、98年コロンビア大学法学修士課程修了。99年ニューヨーク州弁護士資格取得。東京永和法律事務所、シンガポール国立大学リサーチスカラーなどを経て2003年骨董通り法律事務所を設立。10年より日本大学芸術学部客員教授を兼務。著書に『誰が「知」を独占するのか・デジタルアーカイブ戦争』など。

著書

司会

概要

 5月8日、iPodなどの携帯音楽プレーヤーと、テレビ番組を録画するハードディスク内蔵型レコーダーの小売り価格に「著作権料」の一部を上乗せする補償金制度の導入方針を文化庁が提言した。これは既にMDやDVDにかけられている「私的録音録画補償金」を、iPodなどインターネットを通じてコンテンツをダウンロードする機器にまで広げようとするもので、導入されれば数百円程度の補償金が消費者価格に上乗せされることになる。ネット配信が、音楽やビデオ流通の主流になってきている現状を踏まえた措置とされるが、今後パソコンなどにもその対象が広がる可能性も示唆しており、今後利用者サイドからは強い反発が予想される。
 この例を見るまでもなく、デジタル技術の発達やインターネットの普及で、高品質の複製や不特定多数への配信やダウンロードが容易に可能になり、著作権をめぐる新たな問題が次々と持ち上がっている。しかし、ネット時代の著作権をめぐる新しいルール作りの方は、迷走を続けている。そしてその背景には、そもそも著作権が何の目的で誰のために存在するのかについての基本的な認識が共有されておらず、またそのような議論が一向に広まらない中で、利害当事者だけが自分たちの利益のぶつけ合いを繰り返していることにあると、国内外の音楽や映画などの著作権について詳しい弁護士の福井健策氏は指摘する。
 言うまでもなく著作権とは本来、クリエーター(創作者)が価値のある著作物を創作したことへの対価を確保するためのシステムで、それが認められることで、人々に文化的な価値のある創作を行うインセンティブを与えようというもの。何か著作物を作っても、簡単に人に盗作されてしまったり、金銭的な対価を得ることができなかったりすれば、苦労して意味のある著作物を残そうという人はいなくなる。しかし、それではその国にとっても人類全体にとってもマイナスとなることから、著作権という形で創作者の権利に一定の保護が設けられている。しかし、その一方で、保護を手厚くし過ぎると、せっかく意味のある著作物が作られても、それが広く普及したり、大勢の人がその文化的な価値を享受する妨げとなってしまい、著作権保護の本来の目的が損なわれてしまいかねない。
 どの程度まで創作者の権利を保護し、どの程度自由な流通を認めるべきかは、それぞれの社会でのコンセンサスで決まるものであり、「文化の多様性・豊かさや、それへの人々のアクセスを可能にする」という著作権の目的を踏まえた大きな視点での議論を進める必要があると、福井氏は語る。
 しかし、著作権をめぐる議論の現状は、著作権者や著作権管理団体、コンテンツ産業など著作権保護に立つ側と、放送局など各種メディア、インターネット産業関係者、利用者など利便性を促進したい側の、それぞれの利害当事者間の利害対立に終始している感が否めない。両者には深刻な利害対立が存在するため、感情的な議論になりやすく、それがルール作りを困難にしていると福井氏は語る。iPodへの課金問題も、私的複製がこれ以上拡大すれば、コンテンツ産業全体のビジネスモデルを破壊するという危惧から、著作権保護を推進したい業界側が導入を主張してきたが、これにはメーカー側やユーザー側は当然強く反発してきた。ユーザー側には複製を不可能にするDRMが普及している現状で、さらに補償金をとるのは二重課金に当るとの意見や、また、YouTubeやニコニコ動画など動画配信サービスへのアップロードは、仮に違法であっても著作権の侵害自体はコンテンツの宣伝効果によって十分相殺されているため、損害は発生していないとの利用者側の主張にも一定の妥当性はある。
 福井氏はまた、日本では新しいメディアとそこでの私的複製が、著作権についてどういう効果をもたらしているのかなど、実証的な研究がほとんど行われていないため、賛成反対の両陣営ともに、曖昧な議論を繰り返しているのが実情で、ルール作りを進めようにも、社会的なコンセンサスが得られにくい状況があると指摘し、調査研究の必要性を訴える。
 しかし、その一方で、著作権先進国と言われる米国や欧州の仕組みが、日本より優れているとも言い切れない面があると、福井氏は注意を喚起する。例えば、著作者人格権を認めていない米国では、著作権は単なる売買の対象となっており、著作者や出演者が望まない改作が、プロデューサーの一存で当然のように行われる。著作者人格権が含まれる日本の著作権法制では、改作には著作権者の許諾が必要で、それが二次利用や流通促進の妨げになっている面もあるが、その分著作者たちの創作意欲が高く保たれていると考えることもできる。
 今週は、iPodへの課金問題や、JASRACへの公取委の立ち入り検査、YouTubeが提起している著作権問題などの検証を通じて、ネット時代の著作権をめぐる諸問題についてじっくり議論した。

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