郵政国会と橋梁談合の接点
ジャーナリスト
1961年東京都生まれ。84年日本大学経済学部卒業。金融専門誌や経済誌を経て、89年「経済界」に入社。90年よりフリーに。著書は『投信バブルは崩壊する!』、『下流喰い』など。
防衛装備品の調達をめぐり再び腐食の構造が浮き彫りになりつつある。
防衛専門商社山田洋行の役員から法外な接待を受けていたことが明らかになった守屋武昌前事務次官は、二度目となる今週の国会への証人喚問の席で、自身とともに山田洋行から接待を受けた二人の政治家の名前を明かした。名前をあげられた額賀福志郎財務大臣と久間章生元防衛大臣は即座に疑惑への関わりを否定したが、今後山田洋行を舞台とする贈収賄疑惑は、政治家まで司直の手が及ぶかどうかをめぐる攻防戦になると見られている。
防衛利権に詳しいジャーナリストの須田慎一郎氏は、今回の山田洋行事件を「初めて検察が、念願だった防衛利権にメスを入れることができるかもしれないケース」として注目する。安全保障を理由にこれまで司直の手が及びにくかった防衛利権だが、今回の疑惑では、山田洋行の内紛が発端にあるため、大量の内部情報が流出している。今度こそ政治家を検挙したいとの特捜部の思いは強いだろうと須田氏は説く。
確かに1000億円を超える税金が投入されるCX(次期輸送機)の選定をめぐる疑獄事件が、たとえ守屋氏がいかに大物次官と呼ばれたとしても、一介の公務員の権限で動かせるものではない。背後の有力政治家などの大きな力が働いていたと考えるほうが自然だろう。
しかし、見誤ってはいけないのは、この疑惑の本筋は、単なる装備品の利権をめぐる政治家たちの暗躍ではなく、実際は、沖縄の普天間基地移設や海兵隊のグアム移転をめぐる所謂「沖縄利権」にある点であると、須田氏は注意を喚起する。
もともと次官候補ではなかった守屋氏を事務次官に引き上げ、普天間の移転を含むさまざまな沖縄利権を経世会から引き剥がす番頭役に仕立てたのは、小泉政権であり小泉首相本人であったと須田氏は解説する。
今回、守屋氏が名前をあげた二人の政治家は、いずれも旧経世会出身者である。須田氏は、今回の山田洋行事件の背後には沖縄防衛利権があり、守屋氏が槍玉に挙げられている背景には、普天間基地の移転をめぐる沖縄利権における経世会の巻き返しがあるというのが須田氏の見立てだ。もとより経世会の支配下で進められていた海上フロート案が、小泉政権下ではV字滑走路案に変わっている。守屋氏があえて久間、額賀両代議士の名前をあげたのは、「これ以上自分を刺すと、私もいろいろ喋りますよ」という、守屋氏から経世会に対する恫喝だったのではないかと須田氏は言う。
それにしてもなぜ防衛調達は腐敗を繰り返すのか。チェックする仕組みは考えられないのか。噴出するさまざまな疑惑の中で、何に注目しなければならないかを須田氏とともに考えた。